・子どもがいつも口を開けているのが気になる
・いびきや風邪を引きやすい
・歯並びやあごの成長が心配
・集中力が続かないことがある
・鼻呼吸に変えたいけど何から始めたらいいかわからない
そんなお悩みを持つママ・パパへ向けて、今回は子どもの口呼吸を改善し、鼻呼吸へ導くための「毎日できるトレーニング法」をご紹介します。
この記事では、口呼吸がもたらす健康リスクから鼻呼吸のメリット、そして自宅で気軽に始められるトレーニング方法まで、小児歯科医の視点でわかりやすく解説しています。
親子で楽しく続けられる方法を知ることで、毎日の習慣として無理なく取り組めるようになります。
読み終わるころには「今日から始めてみよう」と思えるヒントがきっと見つかりますよ。
口呼吸が引き起こす子どもの健康リスク
口呼吸は、見た目だけでなく、子どもの健康や成長に深く関わっています。日常的に口を開けて呼吸する習慣が続くと、さまざまなリスクが知られています。親として見逃せないその影響について、詳しく見ていきましょう。
免疫力の低下と感染症のリスク
口呼吸をすると、空気中のウイルスや細菌がそのまま体内に入り込みやすくなります。鼻には本来、フィルターの役割があり、細菌やほこりをキャッチしてくれます。しかし口呼吸ではこの機能が働かないため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなってしまいます。さらに、のどの乾燥が進み、炎症を起こしやすくなるのも注意点です。
歯並びや顔の成長への影響
常に口が開いていると、舌の位置が下がり、歯やあごに均等な力がかかりません。その結果、出っ歯や受け口、あごが細くなるなどの顔貌の変化が起こる可能性があります。これらは成長期の骨格にとって大きな影響を及ぼします。また、歯並びの乱れは見た目だけでなく、かみ合わせや発音にも影響を及ぼします。
集中力の低下や睡眠の質の悪化
口呼吸をしている子どもは、夜間にいびきをかいたり、無呼吸の傾向が見られることがあります。これにより、睡眠の質が低下し、翌日の集中力や注意力に影響が出ることもあります。小学校での学習や日常生活に支障をきたすケースも見られるため、早期の対応が求められます。
口腔内トラブルの増加
口呼吸は口の中が乾きやすくなり、唾液の分泌が減ることで虫歯や歯肉炎、口臭の原因になります。唾液には自浄作用や抗菌作用がありますが、それが機能しづらくなるため、虫歯予防にも悪影響が出てきます。
子どもの性格や自信にも影響が?
口呼吸により顔の印象が変わることで、見た目にコンプレックスを持ち始める子もいます。笑顔に自信が持てなくなったり、人前で話すのが苦手になったりするケースもあり、メンタル面にも影響を与える可能性があります。
子どもの将来を見据えるなら、口呼吸を放っておくのは得策ではありません。リスクを正しく理解し、早い段階で鼻呼吸へと切り替える意識がとても大切です。次のセクションでは、鼻呼吸のもたらす具体的なメリットについて詳しくご紹介します。
鼻呼吸のメリットとは?
鼻呼吸は、子どもの健康や発育においてとても重要な役割を担っています。単に「口を閉じる」だけでなく、体の機能を正しく働かせるための自然な呼吸法です。ここでは、鼻呼吸がもたらす具体的なメリットをわかりやすく解説します。
免疫力のアップと感染予防
鼻呼吸をすることで、鼻の中にある粘膜や繊毛がフィルターの役目を果たし、ウイルスや細菌、ほこりなどの異物を体内に侵入させにくくします。さらに、鼻腔内で空気が温められ湿度が保たれるため、のどや気管への刺激も減少。風邪やアレルギーの予防にもつながります。
歯並びやあごの発達をサポート
鼻呼吸ができていると、舌が自然と正しい位置(上あごの内側)に収まり、あごや歯にバランスよく力がかかります。これが歯並びの安定や顔の成長にも良い影響を与えます。特に成長期の子どもにとっては、あごの発達を健全に促すためにも鼻呼吸は欠かせません。
良質な睡眠と集中力アップ
鼻呼吸により、気道がしっかりと確保されることで呼吸が安定します。これにより、いびきや無呼吸が減り、深い睡眠を得られるようになります。良質な睡眠は脳の発達や記憶力、集中力の向上に直結します。勉強や学校生活にも好影響があると言えるでしょう。
正しい姿勢の維持にもつながる
鼻呼吸をすると、口が閉じることで舌の位置が安定し、あごや首の筋肉もバランスよく使われるようになります。これにより、猫背などの不良姿勢の改善にもつながり、全身のバランスを整える一因となります。
表情が明るくなり、自信が持てるように
常に口を閉じて鼻で呼吸している子どもは、口角が上がり、表情も引き締まります。自然と笑顔が増えることで、対人関係にも自信を持ちやすくなります。子どもの自己肯定感を高めることにもつながります。
鼻呼吸は、見た目の印象だけでなく、免疫・骨格・睡眠・学習・心の健康にまで幅広いメリットをもたらします。次の章では、そもそもなぜ子どもが口呼吸になってしまうのか、その原因について詳しく見ていきます。
口呼吸になる原因を知ろう
子どもが口呼吸になってしまうのには、必ず理由があります。無意識のうちに口が開いてしまっている子どもも多く、本人が気づかないまま習慣化していることもあります。口呼吸を改善する第一歩は、「なぜ口呼吸になってしまっているのか」を知ることから始まります。
鼻づまりやアレルギーによる通気障害
もっとも多い原因のひとつが、鼻の通りが悪いことです。アレルギー性鼻炎や慢性的な鼻づまりがあると、鼻から息を吸うのが苦しくなるため、自然と口呼吸に頼るようになります。鼻炎が長引くと、それ自体が習慣となり、鼻が通っていても口で呼吸をしてしまうことがあります。
舌や口まわりの筋力不足
舌の位置が下がっていたり、口の周りの筋肉が弱い場合、口が閉じにくくなり、開いたままになりやすい傾向があります。現代の食生活はやわらかい食べ物が多く、噛む力や口まわりの筋肉を十分に使う機会が少ないため、こうした筋力の低下が目立つようになっています。
姿勢の悪さや骨格のバランス
猫背や前かがみの姿勢は、あごが前に突き出る形になりやすく、口が開きやすい状態になります。また、歯並びやあごの成長バランスが乱れていると、口を閉じること自体が難しくなる場合もあります。体全体の姿勢と呼吸は密接につながっているため、見落とせないポイントです。
口呼吸の「クセ」が定着している
風邪などで一時的に口呼吸をしていた経験が、気づかぬうちに習慣化してしまうこともあります。とくに幼少期はクセがつきやすく、周囲の大人が気づかないと長期間そのままになってしまいます。また、寝ている間の口呼吸も習慣として固定化しやすいため、注意が必要です。
精神的ストレスや緊張
緊張しているときや不安を感じているとき、呼吸が浅くなりやすく、口で早く呼吸をしようとする傾向があります。子どもの感情面の変化も呼吸習慣に影響を与えるため、日常の中で安心感を持てる環境づくりも大切です。
口呼吸にはさまざまな原因が関係しており、複数の要因が重なっていることもあります。まずはお子さんの呼吸の様子を日常生活の中でよく観察し、何が影響しているかを知ることが改善への第一歩です。次の章では、口呼吸から鼻呼吸へ移行するためのトレーニング方法をご紹介します。
毎日できる鼻呼吸トレーニングとは
口呼吸を鼻呼吸に変えるには、「今日から少しずつ始められるトレーニング」を継続することが大切です。無理なく毎日の生活に取り入れられる簡単な方法から始めましょう。お子さんが楽しみながら続けられる内容を中心に、小児歯科医の視点から安全で効果的な鼻呼吸トレーニングをご紹介します。
1日5分から始める「リップ閉じトレーニング」
まず基本となるのが、「口を閉じる力」を養うトレーニングです。
・口を軽く閉じたまま5秒間キープし、ゆっくり息を鼻から吸って、鼻から吐く
・慣れてきたら、10秒、20秒と時間を延ばす
この習慣を朝・夜の1日2回行うだけでも、口を閉じる感覚が身についていきます。
口テープで就寝時も鼻呼吸へ
寝ている間に口が開いてしまう子には、「口テープ」もおすすめです。
・市販の専用テープを使用する
・寝る直前に口の中央に軽く貼る
ただし、風邪や鼻づまりがあるときには無理に使用しないよう注意しましょう。無理なく続けられる日からで構いません。
舌の筋トレで正しい舌の位置をキープ
鼻呼吸のためには、舌が上あごにピッタリとついていることが理想です。
・舌先を上前歯の裏に軽く当てる
・舌全体を上あごに押しつけるようにして数秒キープ
・これを1日5回程度繰り返す
このトレーニングにより、正しい舌の位置が自然に身につき、口呼吸の改善に役立ちます。
噛む力を育てる「かみかみトレーニング」
やわらかい食事が多い現代では、噛む力が不足しがちです。
・おやつにするめや小さな干し芋など、噛む回数が増える食品を取り入れる
・「左右の歯で交互に噛もうね」と声かけしながら食べる
噛むことで、口まわりや舌の筋肉も自然に鍛えられ、鼻呼吸がしやすくなっていきます。
遊び感覚でできる「鼻呼吸ゲーム」
小さなお子さんには、遊びの中でトレーニングを取り入れると効果的です。
・ティッシュを鼻の前に持ち、鼻から息を吹いてゆらす「ふーふーゲーム」
・鼻に空気をためるイメージで「ふんふん」と鼻呼吸を意識する歌を一緒に歌う
楽しく続けることで、「鼻で息をするのが気持ちいい」と体が覚えていきます。
毎日の少しの積み重ねが、習慣となって大きな変化につながります。トレーニングは決して難しいものではありません。お子さんのペースに合わせて、無理なく、楽しく取り組むことが最も大切です。次のセクションでは、トレーニング前に親子で確認しておきたいポイントについて詳しくお伝えします。
トレーニング前に親子で確認したいポイント
鼻呼吸トレーニングは、ただ始めればよいというものではありません。お子さんが安全に、そして前向きな気持ちで取り組めるようにするためには、事前の準備と環境づくりがとても大切です。ここでは、親子でトレーニングを始める前にチェックしておきたいポイントをご紹介します。
鼻がしっかり通っているか確認する
最初に必ず確認したいのは、「鼻で呼吸ができる状態かどうか」です。
・アレルギー性鼻炎、風邪などで鼻が詰まっていないか
・片方の鼻だけでなく両方から空気が通るか
鼻呼吸は鼻が通っていて初めて成立します。もし、鼻づまりが続くようであれば、まずは耳鼻科の受診を検討しましょう。無理なトレーニングは、お子さんにとってつらいだけで逆効果になることもあります。
姿勢や環境を整えてあげる
トレーニングをする際には、正しい姿勢を保つことも重要です。
・イスに座るときは背筋を伸ばし、足の裏を床につける
・寝るときは枕の高さが合っているか確認する
また、集中できる静かな環境を整えてあげると、呼吸に意識を向けやすくなります。テレビを消したり、スマートフォンから離れることもポイントです。
子どもが理解できる説明をする
小さな子どもは、「なんで鼻で息しないといけないの?」と感じることがあります。
・「鼻で息をすると体が元気になるよ」
・「お口を閉じると、お顔がかっこよく・かわいくなるよ」
といったポジティブな言葉で伝えると、子どもは納得しやすくなります。
また、親子で一緒にトレーニングをすることで、子どもも安心感を持ちやすくなります。
失敗しても怒らず、見守る姿勢を
トレーニングは、すぐに効果が出るものではありません。ときには口が開いてしまったり、忘れてしまうこともあるでしょう。そんなときに叱ってしまうと、子どもはプレッシャーを感じてしまいます。
・「今日は鼻で上手に息ができたね!」
・「ちょっとずつでいいよ、一緒にがんばろうね」
といった前向きな声かけが、継続への大きな支えになります。
毎日決まったタイミングを決めておく
「いつやるか」が曖昧だと、どうしても続きにくくなります。
・朝起きたあと、夜寝る前、歯みがきのあとなど
日常のルーティンの中に組み込むと、自然と習慣化しやすくなります。お子さんと一緒に「今日は何時にやろうか?」と話し合って決めるのも良い方法です。
親がサポートしてくれることで、子どもは安心して新しい習慣にチャレンジできます。トレーニングを成功させるための土台をしっかり整えることで、無理なく、効果的に鼻呼吸への切り替えを目指していくことができます。次の章では、鼻呼吸トレーニングを続けるための秘訣についてお伝えします。
成功のカギは「継続」と「楽しく」
鼻呼吸トレーニングの成果は、1日や2日で現れるものではありません。毎日の習慣として定着させるためには、「継続」と「楽しさ」がとても重要です。お子さん自身が前向きな気持ちで取り組めるように、日々のサポートと工夫を取り入れてみましょう。
短い時間でも“毎日”がポイント
長い時間を頑張らなくても構いません。
・1日5分だけのトレーニング
・寝る前の1回だけでもOK
毎日ほんの少しでも継続することで、体が鼻呼吸に慣れていきます。「できた!」の積み重ねが、お子さんの自信にもつながります。
ごほうびシールやカレンダーで達成感を
小さなお子さんには、視覚的な達成感がとても効果的です。
・鼻呼吸ができたらカレンダーにシールを貼る
・10個たまったら好きな絵本を読もう、といったごほうび制度を作る
こうした遊び感覚の工夫が、トレーニングへのモチベーション維持につながります。
親子で一緒にチャレンジしてみよう
子どもは大人のまねをするのが得意です。
・親が一緒にやることで安心感が生まれる
・「ママもいっしょにがんばるね」と声をかけると、自然とやる気がアップ
親子で呼吸法を見直すことで、家族全体の健康意識も高まります。
「できたこと」に目を向ける声かけを
「今日はできなかったね」と言うよりも、
・「昨日よりも長く鼻で息ができたね」
・「ちょっとだけでも口を閉じられてたね」
といったように、できたことを見つけて褒めることが大切です。肯定的な言葉かけは、子どもが前向きに取り組み続ける原動力になります。
苦手な日は無理をしないことも大事
子どもにも気分の波や体調の変化があります。
・眠そうな日、疲れている日には「今日はお休みしようね」と優しく伝える
・トレーニングが「義務」にならないように気をつける
休むことも、長く続けるための一部。お子さんの心と体に寄り添う姿勢が、最終的な成功への近道です。
毎日少しずつ、楽しく取り組むことで、鼻呼吸はお子さんの自然な習慣になります。頑張ることより、続けることを大切に。次の章では、生活の中にトレーニングをスムーズに取り入れるコツを詳しく紹介します。
鼻呼吸トレーニングを生活に取り入れるコツ
鼻呼吸の習慣づけは、日々の暮らしの中で自然に行えるようになることが理想です。特別な時間や場所を必要とせず、生活の一部として無理なく続ける工夫が成功のポイントです。ここでは、鼻呼吸トレーニングを日常に取り入れるための実践的なコツをお伝えします。
「ながらトレーニング」で無理なく習慣化
トレーニングのために特別な時間を確保しなくても、「ながら」でできる方法があります。
・歯みがきの後に5秒だけ鼻で深呼吸
・お風呂に入っている間に鼻で息を整える
・絵本を読む前に「ふーっ」と鼻呼吸をしてみる
短時間で行える小さな習慣が、積み重なることで自然な呼吸法へとつながっていきます。
朝と夜のルーティンに組み込む
1日の始まりと終わりのタイミングは、意識を切り替えるのに最適です。
・朝の着替えや顔を洗った後に「今日も鼻呼吸しようね」と声かけ
・寝る前には「お口はチャックしておやすみね」と優しく伝える
毎日同じ時間に行うことで、習慣化しやすくなります。
食事中に「噛む」ことを意識する
噛む動作は口周りの筋肉を鍛え、鼻呼吸の土台を作ります。
・やわらかすぎない食材を取り入れる
・「よく噛んで食べようね」と声かけする
また、口を閉じたまま噛むように意識させることで、自然と口を閉じる癖が身につきます。
外遊びや運動との相性も◎
体を動かすときは呼吸にも意識が向きやすいタイミングです。
・お散歩中に「鼻で息してる?」と確認する
・軽いジャンプやストレッチと一緒に「ふんふんゲーム」などを取り入れる
運動と組み合わせることで、楽しみながらトレーニング効果もアップします。
家族で取り組むと自然に定着
お子さん一人で頑張るよりも、家族みんなで取り組むことで日常の中に定着しやすくなります。
・パパやママも一緒に「今日の鼻呼吸チェック!」と声をかける
・兄弟と一緒に競争しながらゲーム感覚でやってみる
家庭全体で取り組むことで、楽しく続けられる環境が整います。
特別な道具や時間がなくても、日常のあちこちに鼻呼吸を促すタイミングはたくさんあります。「気づいたときにちょっとやってみる」その積み重ねが、確かな成果につながります。次の章では、この記事のまとめとして、最後に大切なポイントをもう一度お伝えします。
終わりに
子どもの口呼吸には、健康や成長に影響を及ぼすさまざまなリスクが隠れています。放っておくのではなく、早めに気づいて対策をとることが、お子さんの将来にとってとても大切です。鼻呼吸への切り替えは、決して難しいことではありません。大切なのは「毎日少しずつ、親子で楽しく取り組むこと」です。
トレーニングは、特別な準備や時間を必要とせず、生活の中で自然に行える方法がたくさんあります。そして、その効果は身体の健康だけでなく、心の成長や自信にもつながっていきます。
今回ご紹介した内容をヒントに、今日から少しずつ取り組んでみてください。
「気づいたときが始めどき」――お子さんの笑顔と健やかな成長のために、ぜひ鼻呼吸習慣を育てていきましょう。
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