・子どもがプレオルソをつけると口が閉じられなくて不安になる。
・鼻呼吸がうまくできず、健康への影響が心配になる。
・矯正を始めたのに逆効果にならないか気になる。
このように、プレオルソを始めたばかりの親御さんからは多くの不安の声をいただきます。口が閉じられない、鼻呼吸ができない状態は放置すると悪影響につながる可能性もありますが、正しい対応を知ることでお子さまの成長を安心して見守ることができます。
この記事では、小児歯科医の視点でプレオルソ装着中の鼻呼吸や口の閉じ方の工夫、家庭でできるサポート方法について詳しく解説します。読むことで、親として何をすればよいのかがわかり、無用な不安を減らすことができます。ぜひ最後までお読みください。
プレオルソを使うと口が閉じにくい理由
プレオルソは子どもの歯並びや噛み合わせを整えるために使われるマウスピース型矯正装置です。柔らかい素材で作られており、お子さまの成長に合わせたやさしい矯正が可能です。しかし、装着を始めたばかりの時期に「口が閉じにくい」と感じるお子さまは少なくありません。その理由を詳しく見ていきましょう。
まず、プレオルソの厚みや形状が口唇や顎にとって慣れない異物感を生じさせるためです。お子さまの筋肉はまだ発達途中であり、マウスピースを口の中に入れると、口の周りの筋肉が緊張してしまうことがあります。その結果、唇を閉じる動きが難しくなるのです。
また、プレオルソは上顎と下顎の位置関係を正しい状態に導くよう設計されています。そのため、今までの顎の位置と異なる状態を保たなければならず、無意識のうちに口が開いてしまうことがあります。特に夜間や集中していない時に口が開きがちです。
さらに、元々口呼吸の癖があるお子さまは、鼻呼吸に切り替えるのが難しく、プレオルソの装着により口呼吸が目立ってしまうこともあります。口が開く習慣がある場合、唇や顎の筋肉の使い方がうまく機能せず、口を閉じる力が不足していることが多いのです。
このように、プレオルソによる口が閉じにくい理由は、装置の特性やお子さまの筋肉の発達状況、呼吸の癖などが複雑に関係しています。しかし、これらは徐々に改善することが多く、正しい使い方とサポートで口を閉じる力を育てることが可能です。次の見出しでは、鼻呼吸ができないときに起こるリスクについて詳しく解説していきます。
鼻呼吸ができないときに起こるリスク
鼻呼吸はお子さまの成長や健康にとってとても大切です。鼻は空気を吸うときに、ほこりや細菌を取り除き、適度な温度と湿度にして肺へと届ける役割があります。しかし、プレオルソ装着時に口が閉じられず、口呼吸が続いてしまうとさまざまなリスクが出てきます。
まず、口呼吸はお口の中が乾燥しやすくなるため、むし歯や歯肉炎の原因になります。唾液にはむし歯菌を洗い流す働きや、歯を守る成分が含まれていますが、口呼吸では唾液の働きが弱くなり、細菌が増えやすくなるのです。
さらに、口呼吸は歯並びや顎の成長にも影響を与えます。口が開いた状態が続くと、舌の位置が下がり、上顎の成長が抑えられたり、前歯が前に出てきたりすることがあります。これにより、プレオルソで目指すきれいな歯並びが妨げられてしまうこともあります。
また、口呼吸は睡眠の質を下げる原因にもなります。口が開いたまま寝ることで、いびきや浅い眠りになりやすく、成長ホルモンの分泌に悪影響を与えることが心配されます。十分な睡眠がとれないと、日中の集中力や体力にも影響します。
このように、鼻呼吸ができない状態が続くと、お子さまの健康や発育に多くのリスクが伴います。だからこそ、プレオルソを使うときには口を閉じ、鼻で呼吸することを目指すことが大切です。次の見出しでは、口を閉じるための具体的な工夫についてご紹介します。
プレオルソ装着中に口を閉じるための工夫
プレオルソを装着すると、最初はどうしても口が開きやすくなります。しかし、毎日の少しの工夫で口を閉じる力を育てることができます。ここでは、ご家庭で取り入れやすい工夫を具体的にご紹介します。
まず、日常生活の中で「唇を閉じる意識づけ」をすることが大切です。たとえば、テレビを見ているときや本を読んでいるとき、「お口はお休み、唇はピッタリ」のような声かけをしてあげましょう。短時間でも繰り返すことで、無意識の口閉じが習慣になっていきます。
次に、唇や頬の周りの筋肉を鍛える簡単な体操も効果的です。たとえば、ストローを使った吸う練習や、風船をふくらませる遊びは、口周りの筋肉を楽しく鍛えることができます。また、「あいうべ体操」といった口の動きを意識する体操もおすすめです。これらは遊び感覚で取り組めるため、お子さまも嫌がらず続けやすい方法です。
さらに、日中だけでなく夜間も意識することが大切です。寝る前に「お口チャック」のポーズで口を閉じる練習をして、入眠時の口閉じを習慣にするのも良い方法です。ただし、強制的に口をテープなどで閉じるのは、お子さまが不安になったり、呼吸を妨げたりする可能性があるため、自己判断で行わないようにしましょう。
プレオルソの装着初期は、口を閉じることに苦戦するのは自然なことです。焦らず、少しずつお子さまのペースに合わせて取り組むことで、口閉じや鼻呼吸が身についていきます。次の見出しでは、ご家庭でできる鼻呼吸のトレーニング方法をご紹介します。
自宅でできる鼻呼吸トレーニング法
鼻呼吸はお子さまの健康な成長に欠かせません。プレオルソを使っているときこそ、日頃から鼻呼吸を意識して習慣づけることが重要です。ここでは、ご家庭で無理なく取り組める鼻呼吸トレーニング法をご紹介します。
まず簡単にできるのが「鼻を意識した深呼吸」です。親子で一緒に「鼻からゆっくり息を吸って、鼻から吐く」を数回繰り返しましょう。毎日決まった時間に行うことで、鼻で呼吸する感覚が自然と身についていきます。寝る前のリラックスタイムや、登園・登校前の時間などに取り入れるのがおすすめです。
次に、「あいうべ体操」は鼻呼吸の習慣化に役立つ口周りの筋肉トレーニングです。大きく「あー」「いー」「うー」「べー」と口を動かすことで、舌の位置が整い、鼻呼吸がしやすくなります。1回10セットを目安に、毎日続けてみましょう。ゲーム感覚で鏡の前で一緒にやると、お子さまも楽しんで取り組めます。
さらに、鼻通りを良くする環境づくりも大切です。部屋の湿度を保つ、空気清浄機を活用する、寝るときの枕の高さを調整するなど、ちょっとした工夫で鼻呼吸しやすい状態を作れます。特に乾燥する季節や花粉の時期は、意識的に環境を整えることがポイントです。
これらのトレーニングは、お子さまのペースに合わせて楽しく続けることが大切です。鼻呼吸が習慣になれば、プレオルソの効果もより高まり、健康的な歯並びや成長をサポートできます。次の見出しでは、口が閉じられない場合の受診のタイミングについて解説します。
口が閉じられない場合の受診タイミング
プレオルソを装着したばかりの頃、口がうまく閉じられないのは決して珍しいことではありません。多くの場合、お子さまの筋肉が慣れてくるにつれて自然と口を閉じられるようになります。しかし、一定期間経っても改善が見られない場合や、他の症状が見られる場合は、かかりつけの歯科医院への相談をおすすめします。
目安として、装着開始から2〜3か月経過しても口がほとんど閉じられない状態が続く場合は、一度受診して歯科医に現状を確認してもらうと安心です。また、以下のような場合も受診のタイミングです。
・口が閉じられないことで夜間のいびきや無呼吸のような症状が見られる
・日中も口呼吸が目立ち、むし歯や口の乾燥が気になる
・プレオルソの装着がつらそうで長時間つけられない
・装着時に強い痛みや違和感を訴える
こうした症状は、装置のサイズや形状、装着時間の調整が必要だったり、追加のトレーニングや治療が必要だったりするサインかもしれません。自己判断で装置を使わない期間を設けるのではなく、必ず歯科医院でアドバイスを受けるようにしましょう。
親御さんが「少し心配だな」と感じたときに相談することは、お子さまの健康を守る第一歩です。次の見出しでは、親が日常でどんなサポートができるのかについて詳しくお話しします。
親がサポートできること
プレオルソを使い始めたお子さまが口を閉じることや鼻呼吸に苦戦していると、親御さんも心配になるものです。けれど、日常の中で親ができるサポートがたくさんあります。無理なく取り入れられる工夫で、お子さまの口閉じや鼻呼吸の習慣づけを応援しましょう。
まず大切なのは、毎日の声かけです。食事中やテレビを見ているとき、遊んでいるときに「お口はお休みできてるかな?」「鼻でスーッと息してみようね」と優しく声をかけるだけでも、お子さまの意識が高まります。叱るのではなく、褒める声かけが習慣化のポイントです。
次に、親子で一緒にトレーニングに取り組むことも大切です。たとえば、毎晩寝る前に鼻呼吸の深呼吸を3回行う、あいうべ体操を一緒にやるなど、短時間でも親子で楽しく行うことで続けやすくなります。お子さまの頑張りに「すごいね!」「できたね!」と声をかけることで、やる気も育ちます。
さらに、生活環境を整えることも親御さんにできるサポートのひとつです。乾燥を防ぐ加湿器の使用、枕の高さを見直す、空気清浄機で花粉やほこりを減らすなど、お子さまが鼻呼吸しやすい環境を作る工夫をしてみましょう。
親御さんのあたたかいサポートが、お子さまの口閉じ・鼻呼吸の習慣を無理なく育てる大きな力になります。次の見出しでは、プレオルソと鼻呼吸の関係を改めて整理し、理解を深めていきます。
プレオルソと鼻呼吸の関係を理解しよう
プレオルソは、ただ歯並びを整えるだけの装置ではありません。実は、鼻呼吸の習慣を身につけるための大切な役割も果たしています。この関係を正しく理解することで、プレオルソの効果をしっかり引き出し、お子さまの健康な成長をサポートすることができます。
そもそもプレオルソは、上顎と下顎の位置を正しい状態に導き、舌の位置も自然と適切な位置に置けるようにデザインされています。舌が上あごに収まることで、鼻呼吸がしやすくなるのです。しかし、装着直後は慣れないことで口が開きやすく、鼻呼吸に切り替えるのに時間がかかることがあります。
鼻呼吸は、健康的な顔や顎の成長、正しい歯並びの形成に直結しています。口呼吸が続くと、顎の成長バランスが崩れ、出っ歯や受け口、開咬といった不正咬合の原因になることもあります。そのため、プレオルソを活用する際には「鼻で呼吸すること」がとても重要なのです。
プレオルソを使うことで、舌や唇の筋肉、顎の筋肉がバランスよく鍛えられ、自然と口が閉じやすくなり、鼻呼吸の習慣づけにつながります。ただし、この効果を高めるには、毎日の正しい装着と、これまでお伝えしたトレーニングや環境づくりが必要です。
プレオルソと鼻呼吸の関係を知ることで、親御さんの意識も高まり、日々のサポートがより効果的になります。最後に、これまでの内容をまとめ、親御さんに向けたメッセージをお届けします。
終わりに
プレオルソ装着中に「口が閉じられない」「鼻呼吸がうまくできない」と感じるのは、決して珍しいことではありません。大切なのは、お子さまのペースに合わせて、焦らずに取り組むことです。今回の記事でご紹介したように、毎日の声かけや簡単なトレーニング、環境づくりを通じて、少しずつ鼻呼吸と口閉じの習慣は身についていきます。
親御さんが優しく見守り、必要なときには歯科医院で相談することで、お子さまの成長をしっかりサポートできます。プレオルソは歯並びだけでなく、健康的な呼吸や顎の成長を助ける心強い味方です。ぜひ、日々のケアと正しい使い方を続けて、お子さまの健やかな成長を応援してください。
これからも、小児歯科医として親御さんやお子さまのお力になれる情報をお届けしていきますので、気になることや不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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