母乳育児をしていると、赤ちゃんが泣き止まないときや、授乳後も口を動かしているときに「おしゃぶりを使ってもよいのかな」と迷うことがあります。寝かしつけが大変なときや、家事をしている間に少しでも落ち着いてほしいとき、おしゃぶりが気になる保護者の方も多いのではないでしょうか。 一方で、母乳育児中のおしゃぶりには「母乳を飲まなくなるのではないか」「授乳回数が減って母乳の量まで少なくなるのではないか」という心配もあります。特に生まれて間もない時期は、授乳とおしゃぶりのタイミングをどう使い分けるかが大切です。 一般的には、母乳育児が安定するまではおしゃぶりの導入を急がず、母乳の分泌、赤ちゃんの吸いつき方、体重の増え方などを確認してから始めることが勧められています。生後3〜4週間頃が目安として紹介されることもありますが、日数だけで判断するものではありません。 小児歯科医として赤ちゃんのお口を見るときには、おしゃぶりを使っているかどうかだけでなく、吸う力、舌や唇の動き、口の閉じ方、あごの成長なども大切にしています。おしゃぶりの使い方や使用期間によっても、お口との付き合い方は変わります。診断や対応は、それぞれの赤ちゃんの成長や状態に合わせて考える必要があります。 この記事では、母乳育児中のおしゃぶりを始める時期から、授乳との両立方法、安全に使用するためのポイントまで解説します。大切なのは、おしゃぶりを無理に使わないこと、そして赤ちゃんがお腹を空かせているサインを見逃さないことです。母乳育児を大切にしながら、おしゃぶりを必要に応じて取り入れるための判断材料として役立ててください。
- 母乳育児中のおしゃぶりはいつから使い始めるとよいのか
- 母乳育児が安定したと判断するための具体的なサイン
- おしゃぶりが母乳の分泌量や授乳回数に与える影響
- 授乳とおしゃぶりを無理なく両立させる使い方
- 赤ちゃんのお口の発達を考えたおしゃぶりの選び方と注意点
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母乳育児中のおしゃぶりはいつから使える?
母乳育児をしている赤ちゃんにおしゃぶりを使いたい場合、まず考えたいのが導入する時期です。おしゃぶりは赤ちゃんの気持ちを落ち着かせたり、眠りにつくときの安心感につながったりすることがあります。しかし、生まれて間もない時期は母乳を飲むことに慣れていく大切な段階です。そのため、母乳育児が安定するまでは、おしゃぶりの使用を急がないことが基本になります。
母乳育児が安定するまで待つことが基本
米国小児科学会(AAP)では、母乳育児中の赤ちゃんについて、授乳が十分に確立してからおしゃぶりを導入するよう勧めています。目安として生後3〜4週間頃が紹介されることがありますが、すべての赤ちゃんが同じ時期に母乳育児を確立できるわけではありません。 大切なのは、生後何日になったかだけで判断しないことです。母乳が十分に分泌され、赤ちゃんが安定して吸いつき、必要な量を飲めていて、体重も適切に増えていることが重要です。 例えば、生後1か月を過ぎていても、授乳のたびにうまく吸いつけない、母乳の分泌量が安定していない、体重増加が十分でないといった場合には、おしゃぶりの導入よりも授乳の改善を優先します。 反対に、生後3〜4週間より前であっても医療上の事情がある場合には、医師や助産師と相談しながら使用を検討することがあります。
生後3〜4週間は絶対的な決まりではない
生後3〜4週間という時期は、母乳育児が安定するまでの一般的な目安です。必ずこの時期まで待たなければならないという意味でも、4週間になれば全員が使い始めてよいという意味でもありません。 母乳育児の進み方には個人差があります。初めての出産で授乳に慣れていない場合、乳首に痛みがある場合、赤ちゃんの吸う力が弱い場合などは、安定するまで時間がかかることもあります。 また、早産で生まれた赤ちゃんや、体重増加を慎重に確認する必要がある赤ちゃんでは、一般的な目安だけで判断せず、担当医療者の指導を受けることが大切です。
おしゃぶりを使う目的を考える
おしゃぶりを始める前に、何のために使いたいのかを整理しておくと、使用するタイミングを決めやすくなります。
ただし、空腹のサインがある赤ちゃんにおしゃぶりを与えて、授乳を先延ばしにする使い方は避けます。母乳育児では、赤ちゃんが欲しがるタイミングに合わせて授乳することが重要です。おしゃぶりは母乳の代わりになるものではありません。 AAPの安全な睡眠に関する推奨では、母乳育児が確立した後、昼寝や夜間の睡眠時におしゃぶりを提供することが乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク低下につながる可能性があるとされています。おしゃぶりだけでSIDSを防げるわけではなく、仰向け寝や安全な寝床など、ほかの睡眠環境も整える必要があります。 つまり、母乳育児中のおしゃぶりは、授乳の代わりではなく、母乳育児が順調に進んでいる赤ちゃんに対する補助的なアイテムとして考えることが大切です。導入する時期に迷ったら、赤ちゃんの吸いつき方、授乳回数、尿の回数、体重の増え方などを確認し、助産師や小児科医に相談してから始めると安心です。
- 授乳後に吸いたがる赤ちゃんを落ち着かせたい
- 眠りにつくときの安心材料として使いたい
- 抱っこや声かけでも落ち着かないときに補助として使いたい
- 昼寝や夜間の睡眠時に活用したい
おしゃぶりを始める前に確認したい母乳育児の安定サイン
母乳育児中におしゃぶりを導入する場合、生後何週間経過したかだけで判断するのではなく、授乳が安定しているかどうかを確認することが大切です。母乳育児が十分に確立していない段階でおしゃぶりを使うと、赤ちゃんが空腹を伝える機会や授乳の機会を減らしてしまう可能性があります。 母乳育児が安定しているかを判断する際には、母乳の分泌量、赤ちゃんの吸いつき方、飲み込む様子、体重増加などを総合的に確認します。
母乳が十分に分泌されている
まず確認したいのは、赤ちゃんが必要とする母乳を確保できているかという点です。母乳は赤ちゃんが吸う刺激によって分泌が促される仕組みがあります。出生後しばらくは母乳の分泌量が変化するため、授乳を繰り返しながら母乳育児のリズムを整えていきます。 授乳の回数が少なすぎたり、赤ちゃんが十分に飲めていなかったりすると、母乳分泌への刺激も不足する可能性があります。母乳の分泌については、搾乳できた量だけで判断する必要はありません。搾乳量が少なくても、赤ちゃんが直接吸うことで十分に飲めている場合があります。
赤ちゃんが無理なく吸いつけている
次に大切なのが、赤ちゃんの吸着と哺乳の状態です。母乳を飲むときには、赤ちゃんが乳房に深く吸いつき、舌や唇を使って効率よく母乳を飲み取ります。 授乳のたびに比較的安定して乳房に吸いつけること、授乳中に飲み込む様子が確認できること、強い痛みを感じずに授乳できること、授乳後に赤ちゃんが落ち着くことが多いことなどを確認しましょう。授乳のたびに同じように飲めるとは限らず、眠気や体調によって吸い方が変わることもあります。 乳首の傷や強い痛みが続いている場合は、赤ちゃんの吸いつき方や抱き方に問題がないか確認することが大切です。
体重が適切に増えている
母乳育児の安定を確認するうえで、体重の増加は重要な指標です。生まれた直後の赤ちゃんは、一時的に体重が減少することがあります。その後、母乳やミルクを飲む量が安定するにつれて体重が増えていきます。 体重の増加が十分であるかどうかは、出生体重、現在の体重、日齢、成長曲線などを踏まえて判断します。体重が順調に増えていれば、母乳を必要量飲めている可能性を考える材料になります。ただし、体重だけで授乳のすべてを判断することはできません。 体重増加が少ない、出生体重に戻るまで時間がかかっている、授乳してもすぐに眠ってしまうといった場合は、自己判断でおしゃぶりを導入する前に相談してください。
おしっこの回数や赤ちゃんの様子も確認する
母乳を飲めているかを確認する際には、おしっこの回数や赤ちゃんの全身状態も参考になります。生後1週間頃を過ぎた赤ちゃんでは、一般的に1日6回程度以上の濡れたおむつが、十分に哺乳できているかを考える目安の一つになります。ただし、月齢や体調によって異なるため、おむつの回数だけで判断してはいけません。 尿が極端に少ない、口の中が乾いている、ぐったりしている、授乳しても起きにくいといった場合には、脱水や哺乳不足の可能性も考えられます。早めに医療機関へ相談しましょう。
安定しているか迷ったときは専門家に相談する
母乳育児が順調かどうかは、保護者だけで判断するのが難しいこともあります。助産師、産婦人科、小児科などで授乳の様子や体重増加を確認してもらうと、現在のおしゃぶり導入が適切か考えやすくなります。 母乳分泌が十分であること、安定して快適に吸着できること、適切に体重が増加していることなどを総合的に確認してから導入することが、母乳育児とおしゃぶりを無理なく両立させる第一歩です。
母乳育児中におしゃぶりを使うメリット
母乳育児中のおしゃぶりには、赤ちゃんの気持ちを落ち着かせたり、眠りにつくときの安心感を与えたりする働きがあります。赤ちゃんは生まれつき吸う動きを備えており、母乳を飲むためだけでなく、吸うこと自体によって安心することがあります。このような栄養を伴わない吸う動きは「非栄養性吸啜」と呼ばれます。 おしゃぶりは、この吸う欲求を満たすための道具の一つです。ただし、すべての赤ちゃんに必要なものではなく、使わなければならないものでもありません。母乳育児の状況や赤ちゃんの好みに合わせて取り入れることが大切です。
赤ちゃんが安心しやすくなる
赤ちゃんは泣くことで空腹、不快感、眠気、暑さ、寒さなどを伝えます。抱っこや声かけをしても泣き続けるとき、吸う動きによって落ち着く赤ちゃんもいます。 授乳後にお腹が満たされていても、口を動かしたり、指を吸ったりする赤ちゃんがいます。このような様子は必ずしも空腹を意味するわけではありません。吸うことで安心したいという欲求が関係している場合があります。 おしゃぶりを使うと、赤ちゃんが自分で吸う動きを続けられるため、落ち着いて過ごせることがあります。ただし、泣いている原因が分からないときは、すぐにおしゃぶりを与えるのではなく、まず赤ちゃんの様子を確認しましょう。おむつが濡れていないか、暑すぎないか、抱っこしてほしいのかなど、赤ちゃんの状態を見て対応することが基本です。
寝かしつけの補助として使える
赤ちゃんは眠くなると、指や手を口に持っていったり、口を動かしたりすることがあります。吸う動きが安心につながる赤ちゃんでは、おしゃぶりが寝かしつけの補助になる場合があります。 母乳を飲み終わった後に眠そうにしているとき、おしゃぶりを軽く口元に近づけると、自分からくわえて吸い始めることがあります。昼寝や夜間の睡眠時におしゃぶりを提供することには、SIDSのリスクを低下させる可能性があるという研究報告があります。そのため、AAPは母乳育児が確立した後、昼寝や夜間の就寝時におしゃぶりを提供することを推奨しています。 ただし、おしゃぶりだけでSIDSを防げるわけではありません。赤ちゃんを仰向けに寝かせること、硬く平らな寝具を使用すること、枕やぬいぐるみなどを寝床に置かないことも重要です。
指しゃぶりとは異なる特徴がある
赤ちゃんが自分の指を吸うことも、非栄養性吸啜の一つです。指しゃぶりとおしゃぶりには、それぞれ特徴があります。 指しゃぶりは、赤ちゃんが自分の手を口に持っていくことで始まります。いつでも自分の指を吸えるため、親が道具を用意する必要はありません。一方、おしゃぶりは保護者が使用するタイミングを調整できます。使わない時間を作ったり、成長に合わせて卒業を進めたりしやすいという特徴があります。 ただし、おしゃぶりにも長期間使用することで歯並びやあごの成長に影響する可能性があるため、使用期間を考えることが必要です。
保護者の育児負担を軽減することがある
赤ちゃんが落ち着きやすくなることで、保護者の負担が軽くなる場合もあります。例えば、授乳後に赤ちゃんが安心して過ごせる時間が増えれば、保護者が食事をしたり、休息を取ったりする時間を確保しやすくなります。 ただし、おしゃぶりを使用すれば必ず泣き止むわけではありません。また、赤ちゃんが泣くたびにおしゃぶりを使っていると、空腹や体調不良などのサインを見逃す可能性があります。おしゃぶりは育児を助ける道具の一つですが、抱っこや授乳、声かけなどの代わりではありません。
無理に使わなくても問題ない
おしゃぶりが好きな赤ちゃんもいれば、口に入れてもすぐに吐き出す赤ちゃんもいます。どちらも珍しいことではありません。赤ちゃんが嫌がっている場合は、無理にくわえさせないようにしましょう。おしゃぶりを使わず、抱っこや授乳、肌と肌の触れ合いなどで安心できる赤ちゃんもいます。 おしゃぶりのメリットを活用することは大切ですが、使用することそのものを目標にする必要はありません。母乳育児を中心にしながら、赤ちゃんに合う方法を選ぶことが大切です。
母乳育児とおしゃぶりで母乳の量や授乳回数は減る?
母乳育児中におしゃぶりを使うとき、保護者が心配しやすいのが母乳の分泌量への影響です。「おしゃぶりで満足して母乳を飲まなくなったらどうしよう」「授乳回数が減ると母乳が出なくなるのでは」と不安になることもあるでしょう。 おしゃぶりそのものが母乳の分泌を直接止めるわけではありません。しかし、おしゃぶりの使い方によって授乳の機会が減ると、母乳の分泌に影響する可能性があります。大切なのは、おしゃぶりと授乳の役割を区別することです。
母乳は赤ちゃんの吸う刺激によって分泌が促される
母乳の分泌には、赤ちゃんが乳房を吸う刺激が関係しています。赤ちゃんが乳首を吸うと、脳からプロラクチンやオキシトシンといったホルモンが分泌されます。プロラクチンは母乳を作る働きに関係し、オキシトシンは母乳を乳房から外へ送り出す射乳反射に関係しています。 授乳を繰り返すことによって母乳を作る仕組みが維持されるため、母乳育児では赤ちゃんが欲しがるときに授乳することが基本です。 おしゃぶりを使用しても、それ自体が母乳分泌を直接減少させるわけではありません。しかし、空腹の赤ちゃんにおしゃぶりを与えて授乳を遅らせると、乳房への刺激や母乳を飲む機会が減る可能性があります。
空腹のサインをおしゃぶりで隠さない
赤ちゃんが空腹になると、口を開けて乳房を探す、手を口元に持っていく、舌を動かしたり口をもぐもぐさせたりする、顔を左右に動かして吸いつくものを探す、次第に声を出したり泣いたりするといったサインを見せます。 泣くことは空腹のサインの一つですが、必ずしも最初に現れるサインではありません。授乳の時間が近いときに口を動かしている場合は、おしゃぶりを与える前に授乳を検討しましょう。 特に新生児期は、短い間隔で母乳を欲しがることがあります。授乳後すぐに再び欲しがる場合もあり、毎回決まった時間だけ空ける必要はありません。おしゃぶりを与えて泣き止んだとしても、空腹が解消されたとは限りません。赤ちゃんの様子を見て、必要なときには授乳してください。
おしゃぶりによる授乳回数の減少に注意する
母乳育児中におしゃぶりを使う場合、注意したいのが授乳回数との関係です。例えば、赤ちゃんが泣くたびにおしゃぶりを与え、授乳を後回しにする習慣ができると、結果的に授乳回数が少なくなることがあります。 母乳を飲む回数や乳房への刺激が減ることで、母乳分泌が維持されにくくなる可能性があります。また、赤ちゃんが十分な量を飲めていない状態が続けば、体重増加にも影響するおそれがあります。 一方で、授乳が確立した健康な赤ちゃんを対象とした研究では、おしゃぶりの使用が必ずしも母乳育児の継続率や完全母乳育児の割合を低下させるとは示されていません。おしゃぶりを使用することだけを理由に、母乳育児が失敗すると考える必要はありません。
おしゃぶりと母乳を使い分ける
母乳育児とおしゃぶりを両立するには、赤ちゃんが何を求めているのかを考えることが大切です。授乳後に満足していて、眠そうにしながら口を動かしている場合には、おしゃぶりを試すことができます。 一方、母乳を欲しがっている様子があれば、まず授乳を優先します。授乳の間隔を延ばすためにおしゃぶりを使用することは避けましょう。母乳を飲んだ量が分かりにくい場合は、授乳後の様子、体重の増加、おしっこの回数なども確認するとよいでしょう。
母乳量が減ったと感じたときの対応
おしゃぶりを使い始めてから母乳量が減ったと感じる場合は、授乳回数や赤ちゃんの吸いつき方を確認します。授乳回数が減っている場合は、赤ちゃんの空腹サインに早く気づき、欲しがるときに授乳することが大切です。 また、母乳不足が疑われる場合は、自己判断でおしゃぶりを使い続けず、助産師や医師に相談しましょう。必要に応じて授乳姿勢、吸着、母乳分泌、赤ちゃんの体重増加を確認してもらいます。 母乳育児を守るために重要なのは、おしゃぶりを完全に避けることではなく、赤ちゃんが必要な母乳を十分に飲める環境を維持することです。
母乳育児とおしゃぶりを両立する使い方
母乳育児とおしゃぶりは、使い方を工夫することで両立できます。大切なのは、授乳を優先する場面と、おしゃぶりを補助的に使う場面を区別することです。赤ちゃんが泣いたときにすぐおしゃぶりを与えるのではなく、空腹なのか、眠いのか、安心したいのかを確認する習慣をつけましょう。
授乳後に落ち着かないときに試す
母乳を飲み終わった後でも、赤ちゃんが口を動かしたり、手を口に持っていったりすることがあります。このようなとき、必ずしも母乳が足りていないとは限りません。赤ちゃんには栄養を取るための吸啜だけでなく、安心するための吸啜もあります。 授乳後に赤ちゃんが満足している様子で、体をリラックスさせていたり、眠そうにしていたりする場合には、おしゃぶりを試してもよいでしょう。ただし、授乳後も繰り返し乳房を探す、口を開けて吸いつこうとする、落ち着かずに泣き続けるなどの様子がある場合は、追加の授乳が必要な可能性もあります。 まずは赤ちゃんの様子を確認し、必要であれば再度授乳してください。授乳後におしゃぶりを使うことを習慣にする必要はありません。
寝かしつけに使うときのポイント
おしゃぶりは、眠るときの安心材料として使用することができます。母乳を飲み終え、赤ちゃんが満足していることを確認したうえで、昼寝や夜間の就寝時におしゃぶりを提供します。 おしゃぶりを自分からくわえて吸う場合は、そのまま様子を見ましょう。嫌がったり、口から何度も吐き出したりする場合は無理にくわえさせる必要はありません。眠りについた後に自然に口から落ちた場合、もう一度口に入れ直す必要はありません。 寝かしつけでは、おしゃぶりだけに頼らず、室内の温度や湿度を整える、明るさを調整して昼夜の違いをつける、抱っこや声かけで安心させる、赤ちゃんの眠そうなサインを見逃さない、毎日できる範囲で似た流れの寝かしつけを行うなどの習慣も大切です。 なお、おしゃぶりを使用していても、赤ちゃんは必ず仰向けに寝かせ、硬く平らな寝具を使います。枕やぬいぐるみなどを寝床に置かないことも重要です。
授乳とおしゃぶりの時間を固定しすぎない
母乳育児では、赤ちゃんが欲しがるタイミングに合わせて授乳することが基本です。例えば、3時間ごとに授乳するという目安を設けていても、赤ちゃんがそれより早く欲しがれば授乳します。 逆に、授乳後に満足して眠っている場合には、決められた時間になったからといって必ず起こす必要があるとは限りません。ただし、新生児期の体重増加や黄疸などの事情によって、定期的な授乳が必要な赤ちゃんもいます。 おしゃぶりについても、使用時間を細かく決めて管理するより、必要な場面に限定して使うことが大切です。「授乳と授乳の間は必ずおしゃぶりを使う」「毎回寝るときに使わなければならない」といったルールを作る必要はありません。
外出時や家事の間も授乳を優先する
外出中や家事をしているときに、赤ちゃんが泣くこともあります。おしゃぶりを持っておくと、移動中や待ち時間などに赤ちゃんが落ち着きやすくなることがあります。しかし、空腹の赤ちゃんにおしゃぶりを与えて長時間待たせる使い方は適切ではありません。 外出する際は、授乳できる場所や時間も考えておきましょう。赤ちゃんが空腹のサインを見せた場合は、可能な範囲で授乳を優先します。また、家事の間におしゃぶりを使って赤ちゃんを落ち着かせたい場合も、赤ちゃんから目を離しすぎないようにしてください。おしゃぶりをくわえさせたまま、危険な場所に寝かせたり、固定したりすることは避けましょう。
おしゃぶりを使わない時間も大切にする
赤ちゃんは吸うこと以外にも、保護者の表情を見たり、声を聞いたり、抱っこされたりすることで安心感を育てていきます。そのため、おしゃぶりを長時間くわえさせ続けるのではなく、必要な場面で使うことを基本にします。 起きている時間には、赤ちゃんに優しく話しかけたり、目を合わせたり、抱っこをしたりする時間を作りましょう。赤ちゃんが自分から周囲に興味を持ち始めたら、おしゃぶりを外して過ごす時間も大切にします。 母乳育児とおしゃぶりの両立で重要なのは、母乳を飲む機会を守りながら、おしゃぶりを必要に応じて活用することです。赤ちゃんの様子に合わせて柔軟に使い分けていきましょう。
母乳育児中のおしゃぶり選びと使用時の注意点
母乳育児中におしゃぶりを使うことになったら、赤ちゃんの月齢や口の大きさに合った製品を選ぶことが大切です。市販のおしゃぶりにはさまざまな形状や素材がありますが、特定の形のおしゃぶりが母乳育児に必ず適しているとは限りません。 赤ちゃんが安全に使用できることを基本として、清潔に保ちやすく、口に無理なく収まる製品を選びましょう。
月齢に合ったサイズを選ぶ
おしゃぶりには、新生児向け、低月齢向け、成長した赤ちゃん向けなど、月齢やサイズに応じた製品があります。赤ちゃんの口の大きさや成長に合わないものを使用すると、くわえにくかったり、口の周囲に負担がかかったりする可能性があります。 購入する際には、製品に表示されている対象月齢や使用上の注意を確認しましょう。特に、新生児に大きなサイズのおしゃぶりを使うことや、成長しても小さすぎるものを使い続けることは避けます。また、月齢表示だけでなく、製品の構造や安全性についても確認することが大切です。
素材は安全性と手入れのしやすさで選ぶ
おしゃぶりの乳首部分には、シリコーンや天然ゴムなどの素材が使用されています。シリコーン製は透明で、においが少なく、比較的劣化の状態を確認しやすいという特徴があります。天然ゴム製は柔らかく、弾力性がありますが、使用や保管の状況によって劣化するため、こまめな確認が必要です。 どちらが必ず優れているということではありません。赤ちゃんの好みや製品の使用条件、保護者が衛生管理しやすいかどうかを考えて選びましょう。購入時には、対象年齢や材質表示、製造元の情報、使用上の注意なども確認してください。
形状だけで母乳育児への影響は判断できない
おしゃぶりには、丸みのあるタイプ、平らな部分があるタイプ、乳首部分が細長いタイプなど、さまざまな形があります。商品によっては、歯並びへの配慮をうたった形状もあります。しかし、特定の形状を選べば歯並びへの影響がなくなるわけではありません。 また、おしゃぶりの形が母乳を飲むときの吸いつき方を完全に再現するわけでもありません。母乳を飲むときには、赤ちゃんが口を大きく開け、舌や唇を使いながら乳房に吸着します。一方、おしゃぶりは主に吸う動きを満たすためのものです。 形状だけで母乳育児への適合性を判断せず、赤ちゃんが無理なく使用できるか、授乳に影響が出ていないかを確認しましょう。
使用前後は清潔にする
赤ちゃんのおしゃぶりは、口に直接入れるものなので、衛生管理が重要です。使用前には製品の説明書に従って洗浄や消毒を行います。特に新生児期や免疫機能が未熟な赤ちゃんでは、衛生面に注意する必要があります。 基本的な管理方法は、初めて使用する前に説明書に従って洗浄・消毒すること、使用後は汚れを落として清潔にすること、汚れや異物が付着していないか確認すること、保管時は清潔なケースなどを使うこと、傷・亀裂・変色・べたつきなどがあれば交換することです。 消毒方法は製品によって異なります。煮沸、電子レンジ、薬液などが使用できるかどうかを必ず確認しましょう。また、おしゃぶりを保護者が口に入れてきれいにする方法は、保護者の口の中の細菌を赤ちゃんに移す可能性があるため避けてください。
おしゃぶりホルダーの使用には注意する
おしゃぶりを落とさないようにするため、ホルダーを使用したくなることがあります。しかし、首に巻き付けたり、ひもが長い製品を使用したりすると、赤ちゃんの首に絡まる危険があります。 特に睡眠中は、首に掛けるタイプのホルダーや、衣服に取り付けるひも付き製品を使用してはいけません。おしゃぶりにぬいぐるみ、布、玩具などを取り付けることも窒息や絡まりの原因になる可能性があります。睡眠時には、おしゃぶり単体で使用し、周囲に余計なものを置かないことが重要です。
嫌がるときは無理に使わない
赤ちゃんがおしゃぶりを口に入れても、舌で押し出したり、顔を背けたりすることがあります。そのようなときには、何度も押し込まず、いったん使用をやめましょう。 赤ちゃんによって吸いやすい形や好みは異なります。また、おしゃぶりを必要としない赤ちゃんもいます。おしゃぶりを使うことよりも、赤ちゃんが安全で快適に過ごせることを優先してください。
おしゃぶりが合わないときの対応と卒業の考え方
母乳育児中におしゃぶりを使い始めても、赤ちゃんが嫌がったり、すぐに口から出してしまったりすることがあります。また、最初は問題なく使えていても、成長するにつれて使用を嫌がるようになる場合もあります。 おしゃぶりは、すべての赤ちゃんに必要なものではありません。うまく使えないからといって、無理に慣れさせる必要はありません。赤ちゃんの様子を見ながら、使用を続けるかどうか考えていきましょう。
おしゃぶりを嫌がるときは無理にくわえさせない
おしゃぶりを口元に近づけても、赤ちゃんが顔を背けたり、舌で押し出したりすることがあります。このような反応は、おしゃぶりの使用を好まないことを示している可能性があります。無理に口の中へ押し込むと、不快感が強くなったり、おしゃぶり自体を嫌がったりすることがあります。 まずは、赤ちゃんが何を求めているのかを確認しましょう。空腹であれば授乳が必要です。眠い場合には静かな環境を整えたり、抱っこしたりすることが役立つ場合があります。おむつの不快感や暑さ、寒さなどが原因になっていることもあります。 おしゃぶりを嫌がるからといって、別の製品を次々に購入する必要はありません。おしゃぶりを使わずに落ち着けるのであれば、その方法を続けても問題ありません。
おしゃぶりをすぐに吐き出すときの対応
赤ちゃんがおしゃぶりをくわえても、すぐに口から吐き出してしまうことがあります。原因として、おしゃぶりのサイズが口に合っていない、乳首部分の形や硬さが好みに合わない、空腹で母乳を欲しがっている、眠気や不快感が強い、まだおしゃぶりを使う習慣がないなどが考えられます。 まずは授乳の必要がないか確認しましょう。母乳を欲しがっている様子があれば、おしゃぶりではなく授乳を優先します。おしゃぶりを試すときは、赤ちゃんが落ち着いているタイミングにします。嫌がったらすぐに中止し、無理に吸わせようとしないことが大切です。 なお、睡眠中に自然に口から落ちたおしゃぶりを、何度も口に戻す必要はありません。
おしゃぶりを使うと授乳を嫌がるようになった場合
おしゃぶりを使い始めた後、赤ちゃんが乳房に吸いつきにくくなったと感じることがあります。ただし、おしゃぶりが原因とは限りません。乳房への吸着がうまくいかない、母乳の流れ方が変わった、赤ちゃんが眠い、体調がすぐれないなど、さまざまな理由が考えられます。 そのような場合は、まず授乳の様子を観察しましょう。授乳回数が減っていないか、吸いつくまでに時間がかかっていないか、飲み込む様子があるか、体重が適切に増えているかなどを確認します。おしゃぶりを使う頻度を一時的に減らし、授乳を優先することも検討できます。 乳房を嫌がる状態が続いたり、十分に飲めなかったりする場合には、助産師や小児科医に相談してください。特に尿が少ない、ぐったりしている、体重が増えないといった様子があれば、早めの受診が必要です。
おしゃぶりの卒業はいつから考える?
おしゃぶりは、成長に合わせて使用頻度を減らしていくことが大切です。米国小児歯科学会(AAPD)は、長期間のおしゃぶり使用について注意を促しています。生後12か月以降は中耳炎のリスク増加との関連が指摘され、18か月を超えて使用すると、前歯がかみ合わない状態や奥歯のかみ合わせの変化など、口腔顔面の発達に影響する可能性があるとしています。 また、36か月までに非栄養性吸啜の習慣を終了するよう促しています。これらは、すべての赤ちゃんが同じ時期に影響を受けるという意味ではありません。使用時間や頻度、個人の成長などによっても異なります。 ただし、長期間にわたって頻繁に使い続けることは避け、少しずつ使用を減らす意識を持つとよいでしょう。
赤ちゃんの成長に合わせて卒業を進める
おしゃぶりの卒業では、最初から完全に使用をやめるのではなく、使用する場面を少しずつ減らしていく方法があります。起きて遊んでいる時間はおしゃぶりを使わない、授乳後に落ち着いているときは使用しない、寝かしつけのときだけ使用する、おしゃぶりがなくても眠れる日を増やす、赤ちゃんの様子を見ながら使用を終了する、といった順番で進めることができます。 卒業を急いで赤ちゃんに強いストレスを与える必要はありませんが、長期間先延ばしにすることも避けたいところです。おしゃぶりを使用している時間や頻度を把握し、成長に合わせて少しずつ卒業を進めましょう。 また、卒業の時期に歯並びやかみ合わせが気になる場合は、小児歯科で確認することも大切です。おしゃぶりを嫌がる場合も、長く使いたがる場合も、赤ちゃんの成長と口腔発達を考えながら対応することが重要です。
終わりに
母乳育児中のおしゃぶりは、授乳が十分に安定してから取り入れることが基本です。一般的には生後3〜4週間頃が一つの目安として紹介されていますが、赤ちゃんによって母乳育児が確立する時期は異なります。月齢だけで判断せず、母乳の分泌量、吸いつき方、授乳の状態、体重の増え方などを確認することが大切です。
母乳育児を優先しながら活用する
おしゃぶりには、赤ちゃんの吸いたい欲求を満たしたり、寝かしつけを助けたりするメリットがあります。特に、授乳後に満足している赤ちゃんが、安心するために吸いたがる場合には、役立つことがあります。 また、母乳育児が確立した後に昼寝や夜間の睡眠時におしゃぶりを提供することは、SIDSのリスクを低下させる可能性があります。 一方で、おしゃぶりを使うことで授乳の機会が減ってしまうと、母乳分泌に影響する可能性があります。空腹のサインを見逃さず、赤ちゃんが母乳を欲しがっているときには授乳を優先してください。
赤ちゃんのお口の成長も考える
小児歯科医として大切にしたいのは、おしゃぶりを使うかどうかだけでなく、赤ちゃんのお口全体の成長を見守ることです。赤ちゃんは母乳を飲んだり、口を動かしたりする中で、舌や唇、頬、あごなどを使っています。おしゃぶりも吸う動きを伴うため、使用頻度や期間について考えることが必要です。 特に長期間の使用は、前歯のかみ合わせや歯列の発達に影響する可能性があります。おしゃぶりを使い続ける場合には、成長に合わせて使用時間を減らしていきましょう。歯並びだけでなく、あごの成長、かみ合わせ、舌や唇の使い方なども確認することで、お口の発達を総合的に考えることができます。
おしゃぶりを使わない選択も大切
赤ちゃんによって、おしゃぶりの好みは異なります。気に入ってよく使う赤ちゃんもいれば、口に入れてもすぐに吐き出す赤ちゃんもいます。おしゃぶりを使わないからといって、母乳育児に問題があるわけではありません。抱っこや声かけ、授乳などで安心できるのであれば、無理に使用する必要はありません。 反対に、おしゃぶりを使っているからといって、母乳育児がうまくいかなくなるとも限りません。大切なのは、母乳を十分に飲めていることと、赤ちゃんが快適に成長できていることです。おしゃぶりは育児を助ける道具の一つとして、必要な場面で上手に取り入れましょう。 母乳育児中のおしゃぶりの使い方や開始時期に迷ったときは、助産師や小児科医に相談してください。また、おしゃぶりの長期使用や歯並び、舌や唇の動きが気になる場合は、小児歯科でお口の状態を確認してもらうとよいでしょう。 赤ちゃん一人ひとりの成長に合わせて、母乳育児とおしゃぶりを無理なく両立していくことが大切です。
参考資料
※母乳育児とおしゃぶりに関する推奨は、機関によって重点が異なります。WHOは母乳育児の観点から人工乳首類の使用に慎重な立場を示し、AAP・CDCは母乳育児の確立後の睡眠時のおしゃぶり使用を推奨しています。赤ちゃんと保護者の状況に応じて判断してください。
- 米国CDC:乳児の栄養に関するよくある質問
- 米国小児科学会:乳児の安全な睡眠環境に関する推奨(2022年)
- 米国小児歯科学会:おしゃぶりに関する方針
- WHO:母乳育児に関する推奨

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