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指しゃぶりとおしゃぶりは歯並びにどちらが悪影響か違いを解説

指しゃぶりとおしゃぶりの違いとは?

こんにちは。お子さんの歯の健康について日々関心を持っていただきありがとうございます。今回は、小さなお子さんに多く見られる「指しゃぶり」と「おしゃぶり」について取り上げます。どちらも赤ちゃんが安心感を得るための自然な行動ですが、「歯並びに悪いのでは?」と心配される保護者の方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、指しゃぶりとおしゃぶりはどちらも歯並びに影響を及ぼす可能性がありますが、その影響の出方や程度には違いがあります。その違いを知ることで、日常の育児に役立てていただけます。

まずは、指しゃぶりとおしゃぶりの基本的な違いから見ていきましょう。

指しゃぶりとは、生後まもなくから自然に始まることの多い習慣で、赤ちゃんが自分の指(主に親指)を吸うことで安心感を得る行動です。胎児の時期からすでに指をしゃぶっている様子がエコーで確認されることもあるほど、生理的な行動といえます。乳幼児期において、特に眠い時や不安な時などに多く見られます。

一方、おしゃぶりは保護者が与える道具で、人工的な乳首のような形状をしており、赤ちゃんが吸うことで落ち着いたり眠りについたりするのを助けるアイテムです。使うタイミングや頻度は家庭によってさまざまですが、育児用品として一般的に使われています。

このように、指しゃぶりは自発的で継続的に行われやすく、止めたいと思っても本人の意思による部分が大きいためコントロールが難しい側面があります。それに対しておしゃぶりは保護者が与えたり取り上げたりできるため、使用の調整や卒業がしやすいという特徴があります。

また、口の中での吸う力のかかり方や、歯に与える物理的な圧力のかかり方も異なります。これらの違いが、成長にともなう口腔発達や歯並びに影響を与える要因となります。

次の章では、それぞれが歯並びにどう影響するのかを、より詳しく見ていきましょう。特に「指しゃぶり」による影響について解説します。

指しゃぶりが歯並びに与える影響

指しゃぶりは、生理的な安心行動のひとつですが、長期間続くことで歯並びや口の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。特に3歳を過ぎても習慣的に指しゃぶりを続けている場合、歯やあごの発育に明らかな変化が見られることがあります。

なぜ指しゃぶりが歯並びに影響を与えるのかというと、それは“持続的な圧力”が歯や骨にかかるからです。歯や顎の骨は成長途中のため、外から加わる力に影響を受けやすくなっています。指を口の中に入れて吸うと、上の前歯が前に押し出され、下の前歯が内側に押されるような力が継続的に加わります。これにより、いわゆる「出っ歯(上顎前突)」や「開咬(かいこう)」と呼ばれる状態になることがあります。

開咬とは、奥歯をしっかり噛んでも前歯が上下で接触せず、隙間ができてしまう状態です。このような咬み合わせになると、食べ物を前歯で噛み切ることが難しくなったり、発音に影響が出たりすることがあります。特にサ行やタ行の発音がしにくくなることがあり、ことばの発達にも影響を及ぼす可能性があります。

また、指しゃぶりは口腔筋機能にも関与しています。長期間続けていると、舌の位置や動きにも変化が生じやすくなり、舌が低い位置にある「低位舌(ていいぜつ)」という状態を招くことがあります。これにより、飲み込み方や口呼吸の癖がつき、さらに歯並びの悪化を招く一因になることもあるのです。

さらに、指は常に清潔に保つことが難しいため、口の中に雑菌を運びやすくなる点にも注意が必要です。指しゃぶりを頻繁にしていると、指の皮膚が荒れたり、口腔内で炎症が起きたりすることもあります。

このように、指しゃぶりは乳幼児期に一時的に見られる分には問題ありませんが、長期にわたって続くことで歯並びや口腔機能に多面的な影響を与えることが分かっています。次は、おしゃぶりについて同様に、歯並びへの影響を見ていきましょう。

おしゃぶりが歯並びに与える影響

おしゃぶりも、指しゃぶりと同様に乳幼児にとって安心感を得るための手段のひとつですが、使用の仕方や時期によっては歯並びや口の機能に影響を及ぼすことがあります。特に長期間にわたる頻繁な使用は、口腔内に持続的な力がかかり、噛み合わせやあごの成長に影響する可能性があります。

おしゃぶりは人工的な形をしており、製品によっては口腔内の構造に配慮された「歯並びにやさしい形状」のものもありますが、それでも長時間の使用は注意が必要です。おしゃぶりを吸う動作は、上顎の前歯を前方に、下顎の前歯を後方に押す力がかかります。この力が持続的に加わると、前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」の状態になることがあります。

また、おしゃぶりを常に口にくわえていると、舌の動きが制限されてしまいます。これにより、舌の正しい位置が保てなくなり、舌が下がった位置に留まる「低位舌」になりやすくなります。これは、飲み込み方や呼吸の方法にも影響し、さらには将来的な歯並びや発音にも関係してきます。

一方で、おしゃぶりは指しゃぶりに比べてコントロールがしやすいという利点もあります。保護者が使用時間や頻度を管理できるため、適切な時期に卒業を促しやすいのです。また、商品によっては「オーソドンティック(矯正的)」と呼ばれる、歯やあごの発育に配慮されたデザインのものもあります。

特に、生後6ヶ月以降に母乳やミルクの栄養的役割が徐々に減っていく時期から、おしゃぶりの吸啜(きゅうてつ)行動が習慣化すると、乳歯列や骨格に影響が出やすくなります。そのため、おしゃぶりの使用は生後12~18ヶ月頃を目安に、徐々に卒業できるように促していくことが理想的です。

また、おしゃぶりを使用する際には、「寝かしつけの時だけ」「泣き止ませる時だけ」など、シーンを限定することで、長時間の使用を避ける工夫も大切です。歯の成長は個人差がありますが、必要以上に使用を引き延ばすことがないよう、注意深く見守ることが大切です。

次の章では、指しゃぶりとおしゃぶり、それぞれの影響を踏まえて、どちらがより歯並びに悪影響を与えやすいのかについて掘り下げていきます。

指しゃぶりとおしゃぶり、どちらが歯並びに悪影響か?

結論からお伝えすると、一般的には指しゃぶりのほうが歯並びに与える悪影響が大きいといわれています。その理由は、使用のコントロールのしやすさ・やめやすさ・習慣の持続期間などに関係しています。

指しゃぶりは、お子さん自身が無意識に行う行動で、眠いとき、不安なとき、退屈なときなどに自然に始まり、いつでもどこでもできてしまいます。そのため、回数や時間が長くなりやすく、3歳以降まで続くことも少なくありません。また、指は硬さがあるため、歯や骨にかかる圧力が強くなる傾向があります。こうした要因が重なると、開咬や出っ歯(上顎前突)、顎の発達のアンバランスにつながりやすくなります。

一方でおしゃぶりは、保護者が与える道具であり、使用時間や頻度を管理できる点が大きな違いです。「眠るときだけ」「ぐずったときだけ」といった使い方であれば、長時間口にくわえていることを避けることができます。また、おしゃぶりは年齢に応じて卒業を促しやすいアイテムでもあります。お子さんが成長とともに使用しなくなっていくケースも多く、早い段階での卒業ができれば、歯並びに対する影響は最小限に抑えられます。

さらに、最近では歯科的視点からデザインされた「オーソドンティックおしゃぶり」も市販されており、舌の動きや口腔筋の発達に配慮された形状のものもあります。ただし、これらも長時間・長期間にわたって使用すれば、やはり歯並びに影響を及ぼす可能性はあります。

重要なのは、「いつまで続けるか」という点です。どちらの習癖も、3歳頃までに自然に卒業できることが理想的です。それ以降も継続している場合は、歯科医院での相談をおすすめします。歯やあごの発達状況を確認し、個別に適切なアドバイスを受けることで、将来的な歯並びのトラブルを未然に防ぐことができます。

以上のことから、指しゃぶりとおしゃぶりのどちらかを選ぶ場合、適切な管理ができるおしゃぶりの方がリスクが少ないといえるでしょう。ただし、いずれも使用の「期間」と「頻度」に注意することが、健やかな口腔発達のために大切です。

次の章では、実際にお子さんがこれらの習慣から卒業するための工夫についてご紹介します。

指しゃぶり・おしゃぶりのやめさせ方の工夫

指しゃぶりやおしゃぶりを自然に卒業させるには、「急にやめさせようとしないこと」が大切なポイントです。なぜなら、どちらもお子さんにとっては安心を得るための大切な手段であり、単に悪いクセとして断ち切ろうとすると、不安やストレスが大きくなってしまうからです。そこで、段階的にやめられるような工夫を取り入れていくことが、成功のカギになります。

まず、おしゃぶりの場合は保護者のコントロールがしやすいため、比較的スムーズにやめられる傾向があります。初めは「日中は使わない」「寝るときだけにする」など、使用時間を徐々に減らすようにしましょう。慣れてきたら、「今日は使わなくても寝られたね!」とポジティブに声をかけてあげることで、自己肯定感も育まれます。

また、おしゃぶりの使用を卒業する際には、**「卒業イベント」や「お別れの儀式」**のような特別な演出も効果的です。例えば「おしゃぶりさんにありがとうを言ってバイバイしようね」といった形で、お子さん自身が納得しやすくなる方法を選ぶとよいでしょう。中には、おしゃぶりをプレゼントのように箱に入れて保管する「記念保存作戦」も、お子さんにとっては嬉しい体験になります。

一方、指しゃぶりはお子さん自身が自発的に行う習慣であり、強制的に止めるのは難しい場合が多いです。そのため、「やめさせる」よりも「他の安心できる行動に置き換える」という視点でアプローチすることが効果的です。たとえば、抱っこやスキンシップを増やす、安心感のあるぬいぐるみを持たせる、リラックスタイムの読み聞かせなど、指しゃぶり以外に安心を感じられる環境を整えるようにしてみましょう。

また、「〇歳になったから卒業できるね!」というように、成長を意識させる声かけも有効です。子どもにとって“お兄さん”“お姉さん”扱いされることは嬉しいことですから、その気持ちを活かすのも一つの手です。

ただし、やめることを強く意識させすぎてしまうと逆に執着が強くなる場合もあります。無理に叱ったり注意しすぎたりするのではなく、お子さんのペースを大切にしながら進めていくことが、習慣を自然に卒業するうえで大切です。

どうしてもやめられない、ストレスが強く出るなど困った場合には、小児歯科や育児支援の専門機関に相談することをおすすめします。専門的な視点からアドバイスをもらうことで、より安心して進めることができます。

次の章では、やめるタイミングについて詳しく解説していきます。タイミングを見極めることは、習慣卒業の成功率を高める大切なステップです。

やめるタイミングはいつがベスト?

指しゃぶりやおしゃぶりをやめる最適なタイミングは、**「3歳まで」**が一つの目安です。なぜこの時期がベストかというと、乳歯列が完成し始める重要な成長段階に差しかかるからです。3歳以降も続けていると、歯や顎の発達に悪影響を及ぼすリスクが高まり、歯並びやかみ合わせの異常につながる可能性があります。

特に乳歯の前歯が完全に生え揃う2歳半~3歳ごろは、指やおしゃぶりによって生じる圧力の影響が顕著に現れやすくなります。開咬(上下の前歯が噛み合わない状態)や、上顎前突(出っ歯のような状態)などが形成され始める可能性があるため、このタイミングでの卒業が推奨されています。

また、言語の発達にも関連があります。発音や構音(音を正しく作る力)は2歳~4歳にかけて急速に成長していくため、この時期におしゃぶりや指しゃぶりが常習化していると、舌の位置や動きに影響を与えてしまい、正確な発音が難しくなる場合もあります。これは将来的な言葉の発達にも関わるため、注意が必要です。

とはいえ、すべての子どもが同じペースで成長するわけではありません。2歳頃から徐々に使用頻度を減らし始め、3歳までに自然に卒業できるように促すのが理想的ですが、無理にやめさせようとするとかえって執着が強くなることもあります。大切なのは、お子さんの様子を見ながら「タイミングを逃さないこと」と「親子で前向きに取り組む姿勢」です。

また、4歳を過ぎてもやめられない場合は、一度歯科医院での相談をおすすめします。口の中の状態や歯の並びに変化が出始めていないか、専門的にチェックしてもらうことで、安心して次のステップへ進むことができます。

補足として、お子さんの生活の節目(たとえば保育園入園、誕生日、引っ越しなど)は、指しゃぶり・おしゃぶり卒業のよいきっかけにもなります。「新しい環境に合わせて卒業しようね」といった前向きな動機づけを行うと、本人の納得感が高まり、スムーズに卒業できるケースもあります。

次の章では、お子さんのこうした習慣に対して、歯科医院がどのようなサポートを行っているのかをご紹介します。

お子さんの口腔習癖と歯科医院でできるサポート

指しゃぶりやおしゃぶりなど、いわゆる「口腔習癖(こうくうしゅうへき)」は、成長過程で一時的に見られることが多い行動ですが、長期間続くと歯並びや顎の発育、発音、呼吸など多方面に影響を及ぼすことがあります。そうした場合、小児歯科では習癖の状況を丁寧に評価し、年齢や発達段階に応じた適切なアドバイスやサポートを提供しています。

まず、小児歯科では口腔内の状態を確認するだけでなく、お子さんの全体的な発育や生活習慣も含めてカウンセリングを行います。たとえば、指しゃぶりの頻度、時間帯、きっかけとなる状況などを把握することで、その子に合った対応策を一緒に考えていくことができます。

特に3歳以降でも指しゃぶりが続いている場合には、歯列や顎の発育に影響が出始めているかを確認するための診察が重要です。必要に応じて、レントゲンや歯型のチェックを行い、現時点でどのような傾向があるかを把握します。そのうえで、**口腔筋機能療法(MFT:MyoFunctional Therapy)**という舌や唇、頬の筋肉のバランスを整えるトレーニングを取り入れることもあります。MFTは、舌の正しい位置や飲み込みの動作、口を閉じる力などを整えることで、歯並びやかみ合わせを良い方向へ導くサポートになります。

また、指しゃぶりを無理にやめさせるのではなく、「卒業」へ向けた前向きな働きかけができるよう、歯科医院ではお子さん自身の理解を促す工夫もしています。例えば、鏡を使って自分の歯を見てもらったり、イラストや絵本を通じて「どうしてやめるのがいいのか」をやさしく伝えたりと、コミュニケーションを大切にした支援が行われます。

さらに、お子さんのやる気を高めるための「卒業ステップ表」や「がんばりカード」を使ってモチベーションを引き出すこともあります。こうした取り組みは、お子さんが自分の意思で習慣をやめる手助けとなり、無理なく前向きに取り組むための大きな力になります。

保護者の方にとっても、正しい知識とサポートを得ることは大きな安心につながります。家庭でできる声かけや対応方法についてのアドバイスも受けられるため、独りで悩むことなく、二人三脚でお子さんの成長を支えていくことができます。

次の章では、これまでの内容をまとめながら、歯並びを守るために大切なポイントをお伝えしていきます。

終わりに

今回は「指しゃぶりとおしゃぶり、どちらが歯並びに悪影響か?」というテーマで、それぞれの習慣が子どもの口腔発達にどのような影響を与えるのか、詳しくご紹介しました。

指しゃぶりもおしゃぶりも、乳児期に見られるごく自然な行動ですが、続ける期間と使用の仕方によっては、歯並びやあごの発達、さらには発音や呼吸といった機能面にも影響を及ぼすことがあるという点がポイントです。

特に指しゃぶりは、自発的に行われる習慣であるため、おしゃぶりよりも長期化しやすく、歯列への影響が大きくなる傾向があります。一方で、おしゃぶりは保護者の管理がしやすく、上手に使用すれば安心感を得る助けとなる一方で、やはり長期間の使用は避けるべきです。

大切なのは、一律に「悪い習慣」としてやめさせようとするのではなく、子ども一人ひとりの成長や性格に合わせて、段階的に卒業を目指すことです。子どもにとって安心できる代替行動や、前向きな声かけ、そして「やめることが成長の証である」と感じられるようなサポートが、スムーズな習慣卒業の鍵になります。

もし、指しゃぶりやおしゃぶりが3歳を過ぎても続いている場合や、歯並びが気になってきた場合には、ぜひ小児歯科を受診してみてください。お子さんの成長段階に応じた適切なアドバイスを受けることで、不安を解消しながら前向きに取り組んでいくことができます。

当院では、お子さんとご家族が安心して相談できる環境を大切にしながら、健やかな歯とお口の育ちをサポートしています。気になることがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

お読みいただき、ありがとうございました。

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