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鼻呼吸と比べて口呼吸はなぜ体に悪いのか詳しく解説

鼻呼吸と口呼吸の基本的な違いとは

こんにちは。当院のブログをご覧いただきありがとうございます。今回は、日常の呼吸における「鼻呼吸」と「口呼吸」の違いについて、特にお子さんの健康にどう影響するのかをテーマにお話ししていきます。私たちが無意識に行っている「呼吸」ですが、実はそのやり方一つで、身体やお口の健康に大きな差が出てくるのです。

結論から言うと、人間の呼吸は本来「鼻呼吸」が自然であり、健康的な状態です。一方、「口呼吸」はさまざまな不調を引き起こす要因になり得ます。とくに成長期にあるお子さんの場合、長期間の口呼吸が続くことで、歯並びや顔つき、さらには全身の健康にまで影響する可能性があるため注意が必要です。

では、なぜ「鼻呼吸」が良いとされ、「口呼吸」は避けるべきなのでしょうか?

それは、鼻と口とでは空気の通り道としての役割がまったく異なるからです。

鼻は単なる呼吸の通路ではなく、空気中のウイルスやほこりを取り除くフィルター機能、空気を適切な温度と湿度に調整する加温・加湿機能、さらににおいを感じる嗅覚機能など、非常に高機能な器官です。これにより、肺に届く空気は清潔かつ快適な状態になっているのです。

一方、口は本来「食べる」「話す」ための器官です。呼吸機能は備わってはいるものの、空気をろ過したり温めたりする機能はほとんどありません。そのため、口呼吸を続けることで、冷たく乾燥した空気や病原体が直接のどを通って肺に入り込みやすくなり、風邪をひきやすくなる、喉が乾燥しやすい、いびきをかきやすいといった症状が出やすくなります。

とくに小児期は、口呼吸のクセがついてしまうと顎の発達にも影響が出ることがあります。口が常に開いている状態が続けば、舌の位置も本来あるべき上顎に収まらず、歯並びが乱れたり、上顎の成長が抑制されたりするリスクがあります。

今後の見出しでは、鼻の機能の詳しい解説や、口呼吸によって引き起こされる具体的なトラブル、改善策なども含めて、詳しくお話ししていきます。

まずは、「鼻呼吸がどれほど優れた働きをしているのか」から一緒に見ていきましょう

鼻のフィルター機能がもたらす健康効果

結論からお伝えすると、鼻呼吸は体の防御機能の第一関門として、健康を守る重要な役割を果たしています。鼻には、空気中のウイルス・細菌・ホコリ・花粉などを取り除くためのフィルター機能が備わっており、肺や全身への影響を抑える働きがあります。これにより、感染症の予防やアレルギーの抑制など、全身の健康維持に大きく貢献しているのです。

鼻腔(びくう)には、「鼻毛」や「粘液」、そして「線毛(せんもう)」という細かい繊毛が存在し、空気中の異物を絡め取り、体外に排出する仕組みがあります。吸い込んだ空気はこの工程を経て、肺に到達する前にろ過され、ウイルスや細菌の侵入リスクが大きく低減されます。とくに子どもは免疫機能が未熟なため、鼻のフィルター機能による保護が極めて重要です。

また、鼻の粘膜には「加温・加湿機能」も備わっており、冷たい外気を36~37℃程度の体温に近づけ、適度な湿度を加えることで、気道や肺への負担を減らします。乾燥した冷たい空気は、のどの粘膜を傷つけて炎症を起こしやすく、風邪やインフルエンザの原因にもなりますが、鼻呼吸をしていればそうしたトラブルを回避しやすくなります。

さらに、鼻には「一酸化窒素(NO)」というガスが微量に生成されるしくみがあり、これが吸い込んだ空気と一緒に肺に届くことで、血管を拡張させて血流を改善したり、抗菌作用を発揮したりすることもわかってきています。一酸化窒素は鼻呼吸をすることで自然に取り込まれますが、口呼吸ではこの作用が得られません。

たとえば、同じ環境で風邪をひきやすい子とそうでない子がいたとき、鼻呼吸がしっかりできているかどうかが一つの要因になっていることもあります。鼻呼吸によって気道が保護され、乾燥や異物から守られていることで、のどの炎症や感染が防がれているのです。

このように、鼻は単なる呼吸の通路ではなく、「空気を整える装置」として非常に高機能な役割を果たしています。健康な毎日のためには、鼻でしっかり呼吸をすることがいかに大切かがよくわかります。

次は、口呼吸によって起こるお口の中のトラブルについて、詳しく見ていきましょう。

口呼吸が引き起こすお口のトラブル

結論から言うと、口呼吸はお口の中にさまざまな悪影響を及ぼします。とくに乾燥しやすくなることで、むし歯や歯肉炎、口臭のリスクが高まり、健康な口腔環境を維持するのが難しくなるのです。子どもの場合、これらのトラブルが将来的な歯の健康にまで影響する可能性があるため、早めの対処が重要です。

口呼吸では、空気が直接口を通って喉や肺に入るため、鼻呼吸に比べて口腔内が乾燥しやすくなります。唾液には「自浄作用」といって、口の中を清潔に保ち、細菌の繁殖を抑える働きがあります。しかし、口呼吸を続けていると唾液の分泌量が減ったり、唾液が乾いてしまったりすることで、この防御機能が弱まってしまうのです。

この状態が続くと、むし歯や歯肉炎といった感染症にかかりやすい環境が整ってしまいます。さらに、唾液が少ないと舌や粘膜の汚れが残りやすく、細菌が繁殖して口臭が強くなる原因にもなります。とくに小児期は、口腔内の自浄能力も発展途上であるため、よりリスクが高いと言えます。

また、口が常に開いていると、口唇の筋肉や顎の筋肉の発達にも悪影響を及ぼします。これにより、食事中に噛む力が弱くなる、飲み込む力がうまく育たない、発音が不明瞭になるなど、機能的な問題が出てくることもあります。

具体的な例として、お子さんの口元をよく観察すると、以下のような特徴が見られることがあります。

  • いつも口が開いている
  • 唇が乾燥してひび割れている
  • 朝起きたときに喉が痛い、咳が出る
  • よくいびきをかく
  • 歯ぐきが赤く腫れている

これらの症状が見られる場合は、口呼吸の習慣がある可能性が高いと考えられます。放っておくと、むし歯や歯周病の進行、歯並びへの影響にもつながるため、日頃の生活の中で注意深く見ていくことが大切です。

次の見出しでは、なぜ子どもに口呼吸が多いのか、その背景について詳しく解説していきます。

子どもに多い口呼吸とその背景

結論として、子どもに口呼吸が多く見られるのは、発達段階に特有の身体的・環境的な要因が複数関係しているためです。鼻の通りにくさや癖、生活習慣などが影響し、無意識のうちに口で呼吸をするようになってしまうことが多いのです。

まず大きな要因の一つは、鼻の通りにくさです。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)、扁桃腺やアデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)の肥大によって、鼻からの空気の通り道が狭くなっているお子さんは少なくありません。こうした状態が続くと、呼吸しやすい口から空気を取り込む癖がつき、慢性的な口呼吸につながります。

また、舌や口周りの筋肉の発達が不十分な場合も、口呼吸を引き起こす原因になります。舌は通常、上あごにぴったりと収まっているのが自然ですが、筋力が弱いと舌が下がり、口が開いた状態になりやすくなります。さらに、乳児期に長期間の哺乳瓶やおしゃぶりの使用、離乳食の進め方が適切でなかった場合なども、口周りの筋力が十分に育たず、口呼吸のリスクを高めることがあります。

加えて、生活習慣や姿勢も無視できない要素です。テレビやスマートフォンなどを見ているときに口が開いたままになっていたり、うつむきがちな姿勢で過ごしていたりすると、無意識に口呼吸が習慣化されやすくなります。さらに、睡眠時の姿勢や枕の高さも影響することがあるため、家庭での観察も重要です。

保護者の方が気をつけていただきたいのは、こうした口呼吸が**「成長に伴って自然に治る」と思われがち**である点です。しかし、長期間にわたって続くと、歯並びや顔の骨格、全身の健康にまで影響が及ぶため、放置はおすすめできません。

例えば、日中は口を閉じていても、寝ている間に口が開いている、朝起きたときに喉がカラカラになっている、いびきをかいているといった場合も、注意が必要です。これらは、睡眠中に無意識のうちに口呼吸をしているサインかもしれません。

このように、子どもに口呼吸が多く見られるのは、鼻の疾患や筋力の未発達、生活習慣など、さまざまな背景が重なっているためです。次は、口呼吸が体全体にどのような影響を与えるのかについて、詳しく見ていきましょう。

口呼吸が全身の健康に及ぼす影響

口呼吸はお口の中の問題だけでなく、全身の健康にもさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。特に子どもの場合、成長や発達の途中にあるため、影響が蓄積しやすく、体の機能に長期的な影響を及ぼすリスクがあります。

まず注目すべきは、口呼吸が睡眠の質を低下させるという点です。口を開けて寝ることでいびきをかいたり、気道が狭くなって呼吸が浅くなる「睡眠時無呼吸」状態に近くなることがあります。これにより、脳や体への酸素供給が不十分になり、日中の集中力の低下、疲れやすさ、情緒の不安定さといった症状が見られることもあります。

特にお子さんにおいては、学習への影響や行動面の問題として現れることがあり、「落ち着きがない」「注意力が続かない」「疲れやすい」といった学校生活への支障につながるケースも少なくありません。

また、口呼吸をしていると、体内に入る空気が鼻を通らずに直接喉や肺に届くため、異物やウイルス、細菌が体内に侵入しやすくなります。これにより、風邪をひきやすくなったり、喉の炎症、アレルギー症状の悪化などが起こりやすくなるのです。

さらに、慢性的に口を開けていることで、姿勢の乱れにもつながることがあります。口が開いている状態は、あごの位置が後方に下がる傾向があり、それに伴って頭の位置が前に出ます。すると、猫背やストレートネックといった姿勢の崩れが生じやすくなり、肩こりや首の痛み、姿勢バランスの悪化といった体の不調にも発展します。

このように、口呼吸は単なる「呼吸のクセ」ではなく、呼吸・睡眠・免疫・姿勢といった複数の健康要素に影響を及ぼすのです。

特に成長期のお子さんにとっては、質の高い睡眠や安定した免疫機能は、健やかな発育にとって不可欠です。そのため、早い段階で口呼吸に気づき、改善に取り組むことは、将来の健康を守るうえでも非常に重要です。

次は、口呼吸が顔の成長や歯並びにどのような影響を与えるのかを詳しくご説明します。

歯並びや顔の成長に与える影響とは

結論からお伝えすると、口呼吸の習慣は歯並びの乱れや顔の骨格成長に悪影響を与える可能性があります。特に成長期の子どもにとって、日常の呼吸の仕方が顔つきやあごの発育にまで影響を及ぼすことは、見逃せないポイントです。

口呼吸が歯並びに影響を与える理由の一つは、「舌の位置」です。正常な鼻呼吸をしているとき、舌は上あごに軽く接している状態が理想的です。この舌の圧力が、上あごを横に広げ、適切な歯列を維持するサポートをしています。しかし、口呼吸をしていると舌は下がりがちになり、上あごに触れなくなります。その結果、上あごの発育が不十分になり、歯が並ぶスペースが足りなくなってしまうのです。

また、常に口が開いている状態だと、唇や頬の筋肉のバランスも崩れてきます。口の周りの筋力が弱くなることで、前歯が外側に傾いて出てしまう「出っ歯」や、下のあごが前に出てしまう「受け口」などの原因にもなります。

さらに、骨格の成長にも影響が出ます。鼻呼吸をしていれば、鼻腔や上あごがバランスよく発達していきますが、口呼吸が続くと、顔の筋肉や骨の発達に偏りが生じます。具体的には、顔が縦に長くなる「面長」な印象になる、あごが小さくなる、口元が突出するといった変化が起きることがあります。

こうした変化は見た目だけでなく、噛む・飲み込む・発音するといった基本的な口腔機能の発達にも影響を与えるため、将来的な健康リスクにもつながりかねません。

特に乳歯から永久歯への生え変わりの時期は、歯並びやあごの発育にとって非常に大切な時期です。このタイミングで口呼吸の習慣があると、永久歯の並び方に大きく影響し、矯正治療が必要になる可能性も高まります

このように、口呼吸は「歯並び」や「顔の成長」に直結する重要な要素です。逆に言えば、早期に気づき、適切な対応をすることで、子どもの健やかな成長を支えることができるのです。

次の見出しでは、家庭でできる口呼吸の改善方法についてご紹介していきます。

口呼吸を改善するための家庭でできる対策

口呼吸を改善するためには、まず「気づくこと」が第一歩です。そして、家庭でのちょっとした習慣づくりや工夫によって、鼻呼吸への切り替えを無理なくサポートすることができます。結論としては、子ども自身の身体の使い方や環境に注目し、毎日の生活の中で鼻呼吸がしやすい状態を整えることが大切です。

まず大切なのは、鼻の通りを確認することです。鼻づまりがあると当然ながら鼻呼吸は難しくなります。季節性のアレルギーや慢性的な鼻炎、副鼻腔炎などがある場合には、小児科や耳鼻科で適切な診断と治療を受けることが必要です。日常的に鼻をかむ習慣がないお子さんも多いため、やさしく正しい鼻のかみ方を教えてあげることも大切です。

次に、舌や口周りの筋力を育てることもポイントです。口呼吸をしている子どもは、舌の筋力が弱く、正しい位置(上あご)に舌が収まっていないことが多いため、簡単なトレーニングが効果的です。例えば以下のようなものがあります。

  • 口を閉じたまま舌を上あごにつけてキープする練習(舌あげトレーニング)
  • 風船を膨らませたり、ストローで吹く遊び
  • 「パ・タ・カ・ラ」発音トレーニング(口唇・舌の運動に効果)

こういったトレーニングは、遊びの延長として取り入れることで、子どもも無理なく取り組めます。

また、口を閉じる習慣を意識的に作ることも大切です。テレビを見ているときや勉強中など、気が付くと口が開いてしまっていることが多いため、「口を閉じる」ことを声かけしてあげましょう。寝ている間の口呼吸が心配な場合には、「口テープ(医療用の肌に優しいテープ)」を使って寝る方法もあります。ただし、アレルギーや鼻づまりがないことを前提とし、安全に配慮する必要があります。

さらに、食生活や姿勢も見直すポイントです。しっかりと噛む食事を意識することで、口周りの筋力が鍛えられます。また、猫背などの悪い姿勢は呼吸が浅くなり口呼吸を助長してしまうため、座るときの姿勢や枕の高さ、寝るときの体勢にも配慮するとよいでしょう。

最後に、家庭だけでの改善が難しい場合には、小児歯科や耳鼻科と連携してサポートを受けることも大切です。歯科では、口腔機能の検査やトレーニングの提案ができることもあります。

口呼吸の改善は、今日すぐに結果が出るものではありませんが、少しずつ生活の中で習慣を変えていくことで、必ず良い方向に進みます。ご家庭でできることから始めてみましょう。

次はいよいよ最後に、本記事のまとめとして「終わりに」をご案内いたします。

終わりに

ここまで、「鼻呼吸と口呼吸の違い」や「口呼吸が引き起こす様々なトラブル」について詳しくご紹介してきました。結論として、鼻呼吸は身体にとって自然であり、健康を守るための重要な仕組みであるのに対し、口呼吸はお口の中の環境を悪化させるだけでなく、全身の健康や子どもの発育にまで影響を及ぼす可能性があることが分かりました。

特に小児期は、身体も顔つきも歯並びも発展途上です。日常の呼吸の仕方がそのまま将来の健康状態を左右する場合も少なくありません。だからこそ、「たかが呼吸」と侮らず、お子さんの呼吸の様子にぜひ目を向けてみてください。

おうちでできる対策も多くありますし、必要であれば耳鼻科や歯科などの専門機関に相談することも大切です。口呼吸を早期に発見し、正しい鼻呼吸に導いてあげることは、お子さんの健やかな未来を守るための大きな一歩です。

私たち小児歯科では、呼吸や舌の使い方、歯並びに関するご相談も受け付けています。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。日常のちょっとした変化に気づいてあげることが、お子さんの健康を守るいちばんの近道になります。

今後も、子どもたちの健康な成長を支えるために、わかりやすく役立つ情報をお届けしていきますので、ぜひブログの他の記事もご覧くださいね。

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