過蓋咬合について調べていると、「顎変形症なら保険で矯正できる」という情報を目にすることがあります。 しかし、顎変形症という診断名がつけば、すべての矯正治療が保険適応になるわけではありません。 保険診療の対象となるのは、原則として顎離断等の外科手術を必要とする顎変形症に対して行われる手術前後の矯正治療です。 また、治療を受ける医療機関にも一定の条件があります。 この記事では、顎変形症と過蓋咬合の関係、保険適応になる条件、治療の流れについてわかりやすく解説します。
- 過蓋咬合がひどいと顎変形症になる?
- 顎変形症と診断されたら矯正治療は保険適応?
- 手術をしなくても保険は使える?
- どこの歯科医院でも保険で治療できる?
顎変形症とは?過蓋咬合との違いを知ろう
「過蓋咬合がひどいと、顎変形症になるのでしょうか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。 しかし、過蓋咬合と顎変形症は同じものではありません。 過蓋咬合は、上下の歯を噛み合わせたときに、上の前歯が下の前歯を通常より深く覆っている噛み合わせを指します。 一方、顎変形症は、上顎や下顎の大きさ、位置、形などに骨格的な問題があり、噛み合わせや顔貌に影響が生じている状態です。
過蓋咬合は「噛み合わせの状態」を表す言葉
過蓋咬合は、いわゆる「噛み合わせが深い」状態です。 上下の歯を噛み合わせたとき、本来は下の前歯がある程度見えますが、過蓋咬合では上の前歯が下の前歯を大きく覆います。 程度が強い場合には、下の前歯がほとんど見えなくなったり、下の前歯が上顎の歯ぐきに当たったりすることもあります。 ただし、過蓋咬合の原因は一つではありません。
など、さまざまな要因が関係します。 つまり、過蓋咬合という言葉だけでは、歯だけに原因があるのか、顎の骨格にも原因があるのかまでは判断できません。
- 前歯の生え方や傾き
- 奥歯の高さ
- 上下の歯列の位置関係
- 下顎の成長方向
- 上顎と下顎の骨格的なバランス
顎変形症は顎の骨格的な問題を含む
顎変形症では、歯の位置だけではなく、上顎や下顎そのものの大きさや位置関係に大きなずれがみられます。 代表的なものには、
などがあります。 このような骨格的なずれが大きい場合、歯を動かす矯正治療だけでは十分に噛み合わせを改善できないことがあります。 その場合には、矯正治療と顎の骨を動かす外科手術を組み合わせた「外科的矯正治療」が検討されます。
- 下顎が前方に大きく出ている
- 下顎が後方に位置している
- 上顎と下顎の左右差が大きい
- 顎が左右にずれている
- 上下の顎の垂直的なバランスに問題がある
過蓋咬合でも顎変形症とは限らない
ここで大切なのは、過蓋咬合があるからといって、必ず顎変形症というわけではないという点です。 過蓋咬合の中には、主に歯の傾きや生え方によって噛み合わせが深くなっているケースもあります。 一方で、下顎が後方に位置しているなど、骨格的な問題が過蓋咬合に関係しているケースもあります。 見た目が似ていても、原因によって治療方法は異なります。 そのため、「噛み合わせが深い」という見た目だけで、顎変形症かどうかを判断することはできません。
顎変形症かどうかは検査によって判断する
顎変形症が疑われる場合には、口の中の状態だけでなく、顔貌や上下の顎の位置関係なども含めて診断します。 必要に応じてレントゲン写真やセファログラムなどを用いて、顎の骨格的なバランスを詳しく調べます。 その結果、歯を動かす矯正治療だけで対応できるのか、それとも顎の骨格そのものに対する治療が必要なのかを判断していきます。 そのため、過蓋咬合がある場合には、「過蓋咬合かどうか」だけではなく、「なぜ噛み合わせが深くなっているのか」を確認することが重要です。 顎の骨格的な問題が大きく、外科手術を含む治療が必要と診断された場合には、保険適応の対象となる可能性があります。
顎変形症なら矯正治療は保険適応になる?
「顎変形症と診断されたら、矯正治療は保険で受けられるのでしょうか?」 結論からいうと、顎変形症という診断名がついただけで、すべての矯正治療が保険適応になるわけではありません。 保険診療の対象となるのは、原則として、顎の骨を切って位置を動かす「顎離断等の手術」が必要と診断された顎変形症に対して行う、手術前後の矯正治療です。
「顎変形症=必ず保険」ではない
顎変形症では、上顎や下顎の大きさや位置関係などに骨格的な問題がみられます。 しかし、骨格的な問題があるからといって、すべての患者さんに外科手術が必要になるわけではありません。 症状や骨格的なずれの程度によっては、手術を行わずに矯正治療だけで対応することもあります。 このように、顎変形症と診断されていても、顎離断等の手術を行わない矯正治療については、通常の自費による矯正治療となる場合があります。 保険適応を考えるうえでは、「顎変形症という診断名があるか」だけではなく、外科手術を必要とする状態であるかどうかが重要なポイントになります。
保険適応では矯正治療と外科手術を組み合わせる
顎変形症に対する外科的矯正治療では、矯正治療だけを単独で行うのではありません。 一般的には、
という流れで治療を進めます。 手術前の矯正治療では、顎の手術を行ったあとに上下の歯が適切に噛み合うように、あらかじめ歯の位置を整えていきます。 その後、口腔外科などで顎矯正手術を行い、手術後にも矯正治療を続けて噛み合わせを細かく調整します。 つまり、保険適応となる顎変形症の治療は、「保険で矯正だけを行う」というものではなく、外科手術を含めた一連の治療として行われるのが基本です。
- 検査・診断
- 手術前の矯正治療
- 顎の骨を動かす手術
- 手術後の矯正治療
- 噛み合わせの安定を確認
過蓋咬合があっても、それだけで保険適応にはならない
過蓋咬合は、上の前歯が下の前歯を深く覆っている噛み合わせです。 過蓋咬合の中には、顎の骨格的な問題が関係しているケースもあります。 しかし、「過蓋咬合が重度だから保険適応になる」「噛み合わせが深いから顎変形症として保険で治せる」というわけではありません。 過蓋咬合があっても、歯の移動による矯正治療で対応できると判断された場合には、一般的には自費診療となります。 一方で、骨格的なずれが大きく、顎離断等の手術が必要な顎変形症と診断された場合には、手術前後の矯正治療を含めて保険診療の対象になる可能性があります。
保険適応かどうかは診断を受けて判断する
患者さん自身が鏡を見て、「顎がずれているから顎変形症だろう」「過蓋咬合がひどいから保険で治療できるだろう」と判断することはできません。 顎の骨格的な状態や噛み合わせを詳しく検査し、矯正治療だけで対応できるのか、外科手術を組み合わせる必要があるのかを診断する必要があります。 そのため、保険適応について気になる場合には、「私の過蓋咬合は、顎の骨格的な問題が関係していますか?」、「外科手術が必要となる顎変形症に該当しますか?」と歯科医師に確認するとよいでしょう。
過蓋咬合だけでは原則として保険適応にならない
「噛み合わせがかなり深いので、保険で矯正できるのでは?」と考える方もいるかもしれません。 しかし、過蓋咬合があるという理由だけで、矯正治療が保険適応になるわけではありません。 一般的な矯正治療は自費診療です。 過蓋咬合についても、歯の位置や傾き、歯列の状態などを改善するために行う通常の矯正治療であれば、原則として自費診療となります。
過蓋咬合の程度だけでは決まらない
過蓋咬合には、軽度のものから、下の前歯がほとんど見えないほど深く噛み込んでいるものまで、さまざまな程度があります。 重度になると、
といった問題がみられることもあります。 ただし、症状が強いからといって、それだけで健康保険が使えるわけではありません。 保険適応かどうかは、過蓋咬合の「重症度」だけで判断されるものではないという点が重要です。
- 下の前歯が上顎の歯ぐきに当たる
- 前歯に強い負担がかかる
- 歯がすり減りやすくなる
- 噛みにくさを感じる
- 顎に負担を感じる
歯だけの問題なら通常は自費診療
過蓋咬合の原因が主に歯の位置や傾きにある場合には、歯を移動させる一般的な矯正治療によって改善を目指します。 たとえば、
といった治療です。 このような一般的な矯正治療については、通常、健康保険は適用されません。 ワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置など、使用する装置の種類だけで保険適応が決まるわけでもありません。
- 前歯の傾きを整える
- 奥歯の高さを調整する
- 歯列全体の噛み合わせを整える
骨格的な問題があっても手術をしなければ自費になることがある
過蓋咬合の中には、上下の顎の位置関係や顎の成長方向など、骨格的な問題が関係しているケースもあります。 しかし、骨格的な問題があるからといって、必ず保険適応になるわけではありません。 顎のずれがあっても、外科手術を行わず、矯正治療のみで改善を目指す場合には、自費診療となることがあります。 つまり、「骨格性の過蓋咬合=保険適応」ではありません。 顎変形症として保険診療を行う場合には、顎離断等の外科手術を必要とすることなど、一定の条件を満たす必要があります。
保険適応になる矯正治療には例外がある
矯正治療は原則として自費診療ですが、すべてが自費というわけではありません。 たとえば、
などでは、矯正治療が保険診療の対象となることがあります。 ただし、これらは単に「歯並びが悪い」「噛み合わせが深い」という理由だけで適用されるものではありません。
- 顎変形症で顎離断等の手術を必要とする場合
- 厚生労働大臣が定める特定の疾患に起因する咬合異常がある場合
- 一定の条件を満たす永久歯萌出不全がある場合
過蓋咬合では「原因」を調べることが大切
過蓋咬合で保険適応が気になる場合には、まず、なぜ噛み合わせが深くなっているのかを調べることが大切です。 歯の位置が主な原因なのか、顎の骨格的な問題が強く関係しているのかによって、治療方法は大きく異なります。 また、骨格的な問題があったとしても、外科手術が必要な状態なのかどうかによっても保険適応の判断は変わります。 そのため、「過蓋咬合だから保険になるか」ではなく、「どのような原因で過蓋咬合になっているのか」を診断してもらうことが重要です。
過蓋咬合と顎変形症が同時にみられることはある?
過蓋咬合と顎変形症は同じものではありませんが、両方が同時にみられることはあります。 過蓋咬合は、上の前歯が下の前歯を深く覆っている「噛み合わせの状態」を表す言葉です。 一方、顎変形症は、上顎や下顎の大きさや位置、形などに骨格的な問題があり、噛み合わせや顔貌に影響が出ている状態を指します。 そのため、顎の骨格的なずれによって、結果として過蓋咬合が生じているケースもあります。
下顎の位置が後方にあると過蓋咬合になることがある
過蓋咬合では、歯の傾きだけでなく、上下の顎の位置関係が関係していることがあります。 たとえば、下顎が上顎に対して後方に位置している場合には、前歯の噛み合わせが深くなりやすいことがあります。 このようなケースでは、単に前歯だけを見ても原因はわかりません。 上下の顎の前後的な位置関係や、下顎の成長方向などを含めて評価する必要があります。
顎の垂直的なバランスも関係する
過蓋咬合には、顎の前後的な位置だけでなく、上下方向の骨格的なバランスが関係することもあります。 顔の下半分の高さや下顎の回転方向などによって、噛み合わせが深くなる場合があります。 そのため、同じ「過蓋咬合」に見えても、
など、原因は患者さんによって異なります。
- 歯の位置が主な原因
- 顎の骨格が主な原因
- 歯と骨格の両方が関係している
見た目だけでは区別できないことがある
鏡で見て「噛み合わせが深い」とわかっても、それが歯だけの問題なのか、顎の骨格的な問題を伴っているのかを判断するのは困難です。 また、顔貌に特徴があったとしても、それだけで顎変形症と診断できるわけではありません。 顎変形症かどうかを判断するためには、口腔内の状態に加えて、
などを総合的に評価します。 必要に応じて、セファログラムなどのレントゲン検査も行います。
- 顔貌
- 上下顎の位置関係
- 歯の傾き
- 顎の骨格的なバランス
- 左右差
- 噛み合わせ
過蓋咬合だから顎変形症とは限らない
ここで最も大切なのは、過蓋咬合があるからといって、顎変形症と決まるわけではないということです。 歯の位置や傾きによって噛み合わせが深くなっているケースでは、一般的な矯正治療で改善を目指すことがあります。 一方、顎の骨格的なずれが大きく、歯の移動だけでは十分な改善が難しい場合には、外科的矯正治療が検討されることがあります。 つまり、治療方針を決めるうえでは、過蓋咬合という見た目だけでなく、その原因が歯にあるのか、骨格にあるのかを見極めることが重要です。
保険適応は「顎変形症かどうか」だけでは決まらない
過蓋咬合と顎変形症が同時にみられる場合でも、それだけで保険適応になるわけではありません。 保険診療の対象となるかどうかは、顎変形症として診断され、さらに顎離断等の手術を必要とするかどうかなど、一定の条件によって判断されます。 そのため、「過蓋咬合+骨格的な問題=必ず保険適応」ではありません。
保険適応になった場合、どこまで治療が対象になる?
顎変形症として保険適応になった場合、「矯正治療だけが保険になるの?」「顎の手術も保険で受けられるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。 顎変形症の保険治療では、基本的に顎の手術だけを単独で行うのではなく、手術前後の矯正治療を含めた一連の治療として進めていきます。 そのため、治療期間も一般的な歯科治療より長くなります。
まず詳しい検査と診断を行う
顎変形症の治療を始める前には、現在の歯並びや噛み合わせだけでなく、上下の顎の骨格的な位置関係を詳しく調べます。 一般的には、
などを行い、矯正歯科と手術を担当する医療機関が連携して治療計画を立てます。 ここで、歯を動かすだけで対応できるのか、それとも顎の骨を動かす手術が必要なのかを判断します。
- 口腔内の診査
- 顔貌の診査
- 歯型や口腔内スキャン
- レントゲン撮影
- セファログラムによる骨格の分析
- 噛み合わせの確認
手術前に矯正治療を行う
顎変形症の外科的矯正治療では、手術の前から矯正治療を行うことが一般的です。 これを「術前矯正」といいます。 術前矯正では、顎の手術後に上下の歯が適切に噛み合うように、あらかじめ歯の位置や傾きを整えていきます。 ここで注意したいのは、術前矯正をすると、一時的に噛み合わせや見た目が変化することがある点です。 これは手術後の正しい噛み合わせを作るために必要な過程として行われるものです。
顎の骨を動かす手術を行う
術前矯正が進んだら、口腔外科などで顎矯正手術を行います。 手術では、骨格的なずれの状態に応じて、上顎や下顎の骨を移動させ、適切な位置関係に整えます。 患者さんによって、
など、治療方法は異なります。 どのような手術が必要になるかは、骨格的なずれの種類や程度、噛み合わせ、顔貌などを総合的に評価して決定します。
- 下顎のみを手術する
- 上顎のみを手術する
- 上顎と下顎の両方を手術する
手術後にも矯正治療を続ける
顎の手術が終わったら、それで治療終了というわけではありません。 手術後には「術後矯正」を行い、上下の歯の噛み合わせを細かく調整します。 顎の骨格的な位置を手術で整えたあと、歯の位置を調整しながら、できるだけ安定した噛み合わせを目指します。 術後矯正が終了すると、歯並びを維持するために保定装置を使用することもあります。
「手術だけ保険」「矯正だけ保険」と考えない
顎変形症の保険治療では、検査・診断 → 術前矯正 → 顎矯正手術 → 術後矯正という一連の流れで治療することが重要です。 そのため、「手術はしたくないけれど、顎変形症だから矯正だけ保険で受けたい」という形で、自由に保険治療の一部分だけを選べるわけではありません。 外科手術を必要とする顎変形症として、治療計画に沿って手術前後の矯正治療を行うことが保険適応の基本となります。
実際の治療内容や費用は患者さんによって異なる
顎変形症といっても、骨格的なずれの種類や程度は患者さんごとに異なります。 そのため、必要となる検査、矯正治療の期間、手術方法、入院期間なども一人ひとり異なります。 また、保険診療であっても自己負担分は発生します。 具体的な治療内容や費用については、矯正治療を担当する歯科医師や手術を担当する医療機関に確認することが大切です。
保険で治療するには医療機関にも条件がある
顎変形症で外科手術を伴う矯正治療が必要と診断された場合でも、すべての歯科医院で保険診療として矯正治療を受けられるわけではありません。 顎変形症の手術前後の矯正治療を保険で行うためには、一定の施設基準を満たし、必要な届出を行っている医療機関を受診する必要があります。
顎口腔機能診断料の施設基準を満たした医療機関が必要
顎変形症の保険治療では、一般的に「顎口腔機能診断料」に関する施設基準を満たした医療機関で矯正治療を行います。 つまり、「矯正歯科を行っている医院なら、どこでも顎変形症を保険で治療できる」わけではありません。 普段は自費診療で矯正治療を行っている歯科医院でも、顎変形症の保険診療に必要な届出を行っていなければ、保険診療として術前・術後の矯正治療を行うことはできません。 そのため、顎変形症の可能性を指摘された場合には、受診予定の医療機関が保険診療に対応しているかを確認することが大切です。
矯正歯科と口腔外科が連携して治療する
顎変形症の治療では、歯を動かす矯正治療と、顎の骨を動かす外科手術の両方が必要になります。 そのため、多くの場合、
が連携しながら治療を進めます。 矯正治療を行う医院と手術を行う病院が別の医療機関になることも珍しくありません。 術前矯正の進み具合や手術時期、手術後の噛み合わせなどについて情報を共有しながら、一つの治療計画として進めていきます。
- 矯正治療を担当する歯科医師
- 顎矯正手術を担当する口腔外科などの医師・歯科医師
手術は設備の整った医療機関で行う
顎矯正手術では、全身麻酔や入院が必要になることがあります。 そのため、手術は通常、大学病院や総合病院、口腔外科を備えた医療機関など、必要な設備や体制の整った施設で行います。 手術前には、
なども行われます。 矯正歯科だけで治療が完結する一般的な矯正治療とは異なり、複数の診療科や医療機関が関わることがあるのが顎変形症治療の特徴です。
- 全身状態の確認
- 血液検査
- 画像検査
- 麻酔に関する診察
- 手術方法の説明
最初に受診した歯科医院が保険対応でなくても相談はできる
現在通っている歯科医院や矯正歯科が、顎変形症の保険診療に対応していない場合もあります。 その場合でも、まず相談することに意味はあります。 診察の結果、「骨格的な問題が大きい」「外科的矯正治療を検討したほうがよい」と判断された場合には、対応可能な医療機関を紹介してもらえることがあります。 そのため、最初から患者さん自身で顎変形症かどうかを判断し、専門施設を探さなければならないわけではありません。
受診前に確認しておきたいポイント
顎変形症の保険治療について相談する場合には、医療機関に次のような点を確認しておくと安心です。
特に、「顎変形症の相談ができる」ことと「保険で矯正治療ができる」ことは必ずしも同じではありません。 予約時に「顎変形症の保険治療に対応していますか」と確認するとよいでしょう。
- 顎変形症の保険診療に対応しているか
- 顎口腔機能診断料の施設基準に対応しているか
- 手術を担当する医療機関はどこか
- 矯正治療と外科手術をどのように連携して行うか
- 初診時から保険診療になるのか
- 治療期間や費用の目安はどの程度か
保険適応の診断と治療できる施設の確認が重要
顎変形症の保険治療では、外科手術を必要とする顎変形症と診断されることに加えて、保険診療に必要な施設基準を満たした医療機関で治療を受けることも重要です。 過蓋咬合があり、骨格的な問題が気になる場合には、まず詳しい検査を受けて、自分の噛み合わせがどのようなタイプなのかを確認することから始めましょう。
自分の過蓋咬合が顎変形症かどうかはどう調べる?
「自分の過蓋咬合は、顎変形症に当てはまるのでしょうか?」 この疑問は、見た目だけでは判断できません。 過蓋咬合には、歯の位置や傾きが主な原因のものもあれば、上下の顎の骨格的な位置関係が強く関係しているものもあります。 そのため、顎変形症かどうかを判断するには、歯並びだけでなく顎の骨格まで詳しく調べる必要があります。
まずは噛み合わせと顔貌を確認する
診察では、まず口の中の歯並びや噛み合わせを確認します。 過蓋咬合の場合には、
などを確認します。 あわせて、顔貌も観察します。 正面や横顔から、上下の顎の位置関係や左右差などを確認することで、骨格的な問題が疑われるかどうかを判断していきます。
- 上の前歯が下の前歯をどの程度覆っているか
- 前歯の傾きはどうか
- 奥歯の噛み合わせは安定しているか
- 上下の歯列にずれがないか
- 左右差がないか
レントゲンで顎の骨格を詳しく調べる
顎変形症が疑われる場合には、レントゲン検査が重要になります。 特に、矯正治療では「セファログラム」と呼ばれる頭部X線規格写真を用いることがあります。 セファログラムでは、
などを分析できます。 見た目では似たような過蓋咬合でも、セファログラムで調べると原因が異なることがあります。
- 上顎と下顎の前後的な位置関係
- 顎の上下方向のバランス
- 下顎の成長方向
- 前歯の傾き
- 顔面骨格全体のバランス
「骨格性かどうか」だけでなく手術が必要かを判断する
顎変形症の保険適応を考える場合には、骨格的な問題があるかどうかだけでなく、外科手術を必要とする状態かどうかを判断することが重要です。 骨格的なずれがあっても、歯の移動による矯正治療で対応できると判断される場合があります。 一方、骨格的なずれが大きく、矯正治療だけでは十分な噛み合わせの改善が難しい場合には、外科的矯正治療が検討されます。 そのため、「骨格性の過蓋咬合=顎変形症として保険適応」と単純に考えることはできません。
顎変形症の診断では複数の情報を総合する
顎変形症かどうかは、一つの検査だけで決めるものではありません。 一般的には、
などを総合して判断します。 必要に応じて、手術を担当する口腔外科などと連携しながら治療方針を検討します。
- 歯並び
- 噛み合わせ
- 顔貌
- レントゲン
- セファログラムによる骨格分析
- 顎の左右差
- 上下顎の位置関係
自分で判断せず、まず相談することが大切
過蓋咬合が強いと、「これは顎変形症かもしれない」「保険で治療できるのではないか」と考えることもあるでしょう。 しかし、鏡や写真だけで顎変形症かどうかを判断することはできません。 気になる場合には、「私の過蓋咬合は歯だけの問題ですか、それとも骨格的な問題がありますか?」、「外科手術を検討するような顎変形症に該当しますか?」と歯科医師に相談するとよいでしょう。 大切なのは、保険が使えるかどうかだけを先に考えるのではなく、なぜ過蓋咬合になっているのかを正確に診断することです。
まとめ|過蓋咬合だからではなく「手術を必要とする顎変形症」かがポイント
過蓋咬合と顎変形症は、同じものではありません。 過蓋咬合は、上の前歯が下の前歯を深く覆っている「噛み合わせの状態」を表す言葉です。 一方、顎変形症は、上顎や下顎の大きさ・位置・形などに骨格的な問題があり、噛み合わせや顔貌に影響している状態です。 そのため、過蓋咬合があるだけで、顎変形症と診断されるわけではありません。
過蓋咬合だけでは原則として保険適応にならない
矯正治療は、原則として自費診療です。 過蓋咬合についても、歯の位置や傾きを整える一般的な矯正治療であれば、通常は自費診療となります。 また、「過蓋咬合が重度だから保険が使える」というわけでもありません。 噛み合わせの深さだけで保険適応が決まるのではなく、どのような原因によって過蓋咬合が生じているのかを詳しく調べる必要があります。
顎変形症でも必ず保険になるわけではない
顎の骨格的な問題がある場合でも、それだけで矯正治療が保険適応になるとは限りません。 顎変形症の保険治療では、基本的に顎離断等の外科手術を必要とすることが重要な条件になります。 そのため、
というだけではなく、外科手術を組み合わせた治療が必要かどうかまで含めて診断する必要があります。
- 顎変形症と診断された
- 骨格的なずれがある
保険治療では手術前後の矯正を行う
保険適応となる顎変形症の治療では、一般的に、
という流れで治療を進めます。 「顎変形症だから矯正だけを保険で受ける」という治療ではなく、外科手術を含めた一連の治療として行われるのが基本です。 また、保険診療として術前・術後の矯正治療を行うには、必要な施設基準を満たした医療機関を受診する必要があります。
- 詳しい検査と診断
- 術前矯正
- 顎矯正手術
- 術後矯正
- 噛み合わせの安定確認
過蓋咬合では原因を調べることが重要
過蓋咬合には、
など、さまざまなタイプがあります。 見た目だけでは原因を判断できないため、必要に応じてレントゲンやセファログラムなどを用いて詳しく調べます。 特に、顎のずれや顔貌の左右差なども気になる場合には、骨格的な問題がないか確認してもらうとよいでしょう。
- 歯の位置や傾きが主な原因
- 顎の骨格が主な原因
- 歯と骨格の両方が関係している
「保険になるか」より先に正しい診断を
過蓋咬合について相談するときには、「保険で治せますか?」という質問も大切ですが、それ以上に、「なぜこの噛み合わせになっているのか」を明らかにすることが重要です。 過蓋咬合だからといって必ず顎変形症ではなく、顎変形症だからといって必ず保険適応になるわけでもありません。 保険適応の大きなポイントは、顎離断等の手術を必要とする顎変形症として診断されるかどうかです。 噛み合わせの深さや顎の位置が気になる場合には、自己判断せず、まず歯科医院で詳しい診察を受けてみましょう。

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