子どもの受け口、いわゆる「反対咬合」に気づくと、いつ矯正を始めるべきなのか悩む保護者の方は少なくありません。反対咬合は、前歯の生える向きや位置が関係している場合もあれば、上顎と下顎の成長のバランスが関係している場合もあります。そのため、「○歳になったら必ずこの矯正をする」と年齢だけで治療方法を決めることはできません。 小児歯科医が子どもの反対咬合を考えるときは、現在の噛み合わせだけを見るのではなく、乳歯から永久歯への生え替わり、顎の成長、歯が並ぶスペース、口周りの状態なども確認します。成長途中の子どもだからこそ、今すぐ治療を検討したほうがよい状態なのか、成長や歯の生え替わりを確認しながら経過を見るのかを一人ひとり判断することが大切です。 この記事では、受け口(反対咬合)の原因や特徴を整理したうえで、3〜5歳ごろの乳歯列期、6〜9歳ごろの前期混合歯列期、10〜12歳ごろの後期混合歯列期、13歳以降の永久歯列期に分けて、矯正治療の考え方や使用される装置について詳しく解説します。さらに、治療期間や費用を考える際のポイント、歯科医院へ相談する目安についても紹介します。 年齢ごとの違いを知ることで、「まだ様子を見てもよいのか」「一度相談したほうがよいのか」を考える材料が増えます。受け口の矯正で大切なのは、年齢だけで判断せず、反対咬合の原因と子どもの成長段階を確認したうえで、その時期に合った対応を考えることです。
- 「子どもの下の歯が上の歯より前に出ている気がする」
- 「受け口は自然に治ることもあるの?」
- 「反対咬合の矯正は何歳から始めればいい?」
- 「早く治療したほうがいいのか、永久歯が生えるまで待っていいのか迷う」
- 「年齢によって矯正方法が違うのか知りたい」
受け口(反対咬合)とは?原因と子どもの成長との関係
受け口とは、上下の歯を噛み合わせたときに、下の前歯が上の前歯より前に出ている状態を指します。歯科では「反対咬合」と呼ばれ、見た目だけではなく、噛み合わせや顎の成長にも関わることがあります。 通常は、上の前歯が下の前歯をわずかに覆うように噛み合います。しかし反対咬合では、前歯の位置関係が反対になります。子どもの受け口にはいくつかの原因があり、すべて同じ理由で起こるわけではありません。
反対咬合は歯の傾きだけが原因とは限らない
子どもの反対咬合は、大きく分けると「歯の位置や傾きが関係している場合」と「上顎・下顎の成長バランスが関係している場合」があります。 たとえば、上の前歯が内側に傾いていたり、下の前歯が外側に傾いていたりすると、顎の骨格に大きな問題がなくても反対咬合になることがあります。 一方で、上顎の成長が控えめであったり、下顎が前方へ成長する傾向が強かったりすると、骨格的な要因を伴う反対咬合になることがあります。家族に受け口の方がいる場合には、顎の成長傾向が似ることもあります。 そのほか、噛む位置のずれや舌の使い方、口周りの筋肉の状態などが噛み合わせに関係する場合もあります。
子どもの受け口は成長とともに変化する
子どもの歯並びや噛み合わせは、成長とともに大きく変わります。乳歯が生えそろった時期と、前歯が永久歯へ生え替わる時期では、同じように見える反対咬合でも意味が異なることがあります。 特に子どもの顎は成長途中です。上顎と下顎では成長する時期や程度が異なるため、現在の噛み合わせだけを見て将来の状態を決めつけることはできません。 反対咬合を確認するときは、
などを総合的に確認します。
- 上下の前歯の傾き
- 上顎と下顎の位置関係
- 乳歯から永久歯への生え替わり
- 顎の成長
- 噛んだときの顎のずれ
- 舌や口周りの使い方
「受け口だからすぐ矯正」とは限らない
保護者の方が気になるのは、「反対咬合を見つけたら、すぐ矯正を始めたほうがよいのか」という点ではないでしょうか。 反対咬合は、状態によって治療を検討する時期が異なります。早い段階で噛み合わせを確認したほうがよい場合もあれば、永久歯への生え替わりや顎の成長を見ながら経過を確認する場合もあります。 大切なのは、年齢だけで治療開始を判断しないことです。歯の傾きによる反対咬合なのか、顎の成長が関係しているのかによって、治療の考え方は変わります。 子どもの受け口に気づいたら、「まだ小さいから大丈夫」と自己判断で長期間様子を見るのではなく、一度歯科医院で噛み合わせを確認してもらうと安心です。現在の状態を把握しておくことで、必要な時期に必要な対応を考えやすくなります。
反対咬合の矯正は何歳から?年齢だけで決めない理由
子どもの受け口に気づくと、「反対咬合の矯正は何歳から始めればいいの?」と気になる方は多いでしょう。反対咬合の治療を考えるうえで大切なのは、年齢だけで開始時期を決めないことです。 同じ5歳、同じ8歳でも、乳歯の残り方や永久歯への生え替わり、顎の成長、前歯の傾きには個人差があります。そのため、「○歳になったら矯正を始める」という一律の基準ではなく、子どもの口の中と成長の状態を確認したうえで治療時期を考えます。
反対咬合は原因によって治療時期が変わる
反対咬合には、歯の位置や傾きが主な原因となっている場合と、上顎・下顎の成長バランスが関係している場合があります。 前歯の傾きによって噛み合わせが反対になっている場合は、永久歯への生え替わりの状況を見ながら治療を検討することがあります。一方、顎の成長が大きく関係している場合は、成長時期を考慮しながら経過を確認することが重要です。 また、噛んだときに下顎が前方へずれることで受け口のようになっているケースもあります。見た目が似ていても原因が異なれば、選択される矯正方法も変わります。
「早ければ早いほどよい」とは限らない
反対咬合は早期治療について耳にすることが多いため、「少しでも早く矯正しなければ」と焦ってしまうことがあります。しかし、早く始めること自体が目的ではありません。 子どもの矯正で大切なのは、治療が必要なタイミングを見極めることです。まだ歯が生え替わる前の段階では経過を見ることもありますし、噛み合わせや顎の動きによっては早めに対応を検討することもあります。 早期に相談することと、早期に治療を始めることは同じではありません。早めに口の状態を確認しておくことで、すぐ治療するのか、定期的に成長を確認するのかを判断しやすくなります。
矯正を始める判断では「成長」と「生え替わり」が重要
反対咬合の矯正時期を考える際には、次のような点を確認します。
子どもの口の中は、数か月から数年の間にも変化します。現在の状態だけでなく、これからどのように成長していくかを考えながら治療計画を立てることが重要です。
- 乳歯と永久歯の生え替わりの状態
- 上下の前歯の傾きや位置
- 上顎と下顎の成長バランス
- 噛んだときの顎の位置
- 永久歯が並ぶスペース
- 口周りや舌の使い方
- 矯正装置を使用できる生活環境や協力度
受け口に気づいた時点で一度相談しておく
治療開始の年齢を家庭だけで判断するのは難しいものです。「まだ乳歯だから相談するのは早い」と考える必要はありません。 反対咬合が気になった時点で歯科医院へ相談しておくと、現在の噛み合わせや顎の状態を確認できます。そのうえで、治療を検討する時期や経過観察の間隔について説明を受けることができます。 反対咬合の矯正は、「何歳から」という数字だけで考えるのではなく、歯の生え替わりと顎の成長を一緒に見ることがポイントです。年齢は治療を考える目安のひとつですが、最も大切なのは子ども一人ひとりの成長段階に合わせて判断することです。
3〜5歳ごろの受け口矯正|乳歯列期に考える治療と経過観察
3〜5歳ごろは、乳歯がほぼ生えそろい、上下の噛み合わせが分かりやすくなる時期です。前歯を噛み合わせたときに下の歯が上の歯より前に出ている場合、反対咬合が確認されることがあります。 この時期の受け口では、「すぐに矯正を始めるのか」「永久歯が生えるまで様子を見るのか」で迷う保護者の方も少なくありません。乳歯列期の反対咬合は、すべての子どもに同じ治療が必要になるわけではなく、噛み合わせの状態や顎の成長、原因を確認したうえで対応を考えます。
3〜5歳の反対咬合では原因の確認が大切
乳歯列期の反対咬合では、上の前歯が内側へ傾いている場合、下の歯が前方へ出ている場合、上下の顎の成長バランスが関係している場合などがあります。 また、普段は大きな骨格的なずれがなくても、噛み込むときに下顎を前へ動かすことで受け口になっているケースもあります。 そのため、見た目だけで「骨格性の受け口」と判断することはできません。歯科医院では、前歯の位置や顎の動き、顔立ちや噛み合わせ、家族の歯並びなども参考にしながら状態を確認します。
乳歯列期でも矯正を検討することがある
3〜5歳ごろでも、噛み合わせや顎の動きによっては矯正治療を検討する場合があります。 治療方法としては、取り外し式の装置や口周りの筋肉の働きを考慮した装置などが選択されることがあります。ただし、使用する装置は反対咬合の原因や子どもの発達状況によって異なります。 小さな子どもでは、装置を決められた時間使用できるかどうかも大切です。嫌がって装着できない状態で無理に進めても、計画通りに治療を行うことが難しくなります。年齢だけではなく、本人の理解度や生活リズムも含めて治療方法を考える必要があります。
経過観察を選ぶことも立派な対応
反対咬合が確認されたからといって、必ず3〜5歳で矯正装置を使うわけではありません。 前歯の生え替わりを確認したほうがよい場合や、顎の成長を定期的に見たほうがよい場合には、経過観察を選択することがあります。経過観察とは「何もしない」という意味ではありません。 定期的に噛み合わせを確認することで、
といった点を確認できます。 成長の変化を継続して見ておくことで、治療を始める必要が出てきたときにも対応しやすくなります。
- 反対咬合が強くなっていないか
- 顎を前へずらして噛んでいないか
- 永久歯への生え替わりが順調か
- 上下の顎の成長に変化がないか
「まだ3歳だから大丈夫」と決めつけないことが大切
3〜5歳は成長の途中なので、将来の歯並びを正確に決めつけることはできません。一方で、「乳歯だから放っておいても問題ない」と一律に考えるのも適切ではありません。 受け口の治療では、早く装置を使うことよりも、早い段階で状態を把握しておくことに意味があります。乳歯列期に反対咬合が気になったら、一度噛み合わせを確認し、治療が必要なのか、定期的に経過を見るのかを考えていくことが大切です。
6〜9歳ごろの反対咬合矯正|前期混合歯列期の治療方法
6〜9歳ごろは、乳歯から永久歯への生え替わりが本格的に始まる「前期混合歯列期」です。特に上と下の前歯が永久歯へ生え替わることで、反対咬合の状態がより分かりやすくなる時期でもあります。 乳歯のときに受け口だった子どもが、永久歯への生え替わり後も反対咬合のままである場合や、永久歯が生えたことで新たに噛み合わせの反対が目立つ場合もあります。この時期は、前歯の位置だけではなく、上顎と下顎の成長や永久歯が並ぶスペースまで確認しながら治療方法を考えることが大切です。
前歯の永久歯が生えた時期は噛み合わせを確認しやすい
6〜9歳ごろになると、上の前歯と下の前歯が永久歯へ生え替わってきます。永久歯の前歯が生えた段階で下の歯が上の歯より前にある場合は、反対咬合として治療を検討することがあります。 歯の傾きが原因となっている場合には、前歯の位置を整えて噛み合わせを改善することを目的とした装置が使用されることがあります。一方で、上顎の成長が控えめであったり、下顎の成長傾向が強かったりする場合には、顎の成長も考慮した治療計画が必要です。 同じ「前歯が反対に噛んでいる」という状態でも、原因によって治療方法は変わります。
反対咬合の原因に合わせて矯正装置を選ぶ
前期混合歯列期では、取り外し式の矯正装置や固定式の装置などが検討されることがあります。成長や噛み合わせの状態によっては、上顎の成長を考慮した装置が選択される場合もあります。 矯正装置を選ぶ際には、
などを確認します。 取り外し式の装置は、自宅での装着時間が治療計画に関わるため、本人と家族の協力も重要になります。学校生活や習い事、就寝時間なども考慮して、無理なく続けられる方法を検討することが大切です。
- 前歯の傾きや位置
- 上顎と下顎の位置関係
- 永久歯が並ぶスペース
- 顎を前へずらして噛んでいないか
- 永久歯への生え替わりの進み方
- 装置を継続して使用できるか
前期混合歯列期の矯正ですべてが終わるとは限らない
6〜9歳ごろに反対咬合の治療を行った場合でも、それだけで将来の矯正治療がすべて不要になるとは限りません。 子どもの顎はその後も成長します。前歯の噛み合わせが整ったあとも、犬歯や奥歯が永久歯へ生え替わることで歯並びが変化することがあります。また、下顎の成長が続くことで噛み合わせに変化が現れる場合もあります。 そのため、この時期の治療では「今の反対咬合への対応」と「今後の成長を確認すること」の両方が大切です。治療後も定期的に歯並びや顎の成長を確認していきます。
6〜9歳は将来の歯並びを考える大切な時期
前期混合歯列期は、乳歯と永久歯が混在し、口の中が大きく変化する時期です。永久歯の前歯が反対に噛んでいる、下顎を前に出して噛んでいる、以前より受け口が目立ってきたと感じた場合は、一度相談しておくとよいでしょう。 反対咬合の矯正では、早く始めることだけを重視するのではなく、原因と成長段階に合ったタイミングを見極めることが重要です。6〜9歳ごろは、永久歯への生え替わりと顎の成長を確認しながら、その子に合った治療方法を考えやすい時期といえます。
10〜12歳ごろの反対咬合矯正|永久歯への生え替わりと治療選択
10〜12歳ごろは、乳歯から永久歯への生え替わりが後半に入り、犬歯や小臼歯なども次々と生えてくる時期です。歯科では「後期混合歯列期」と呼ばれ、将来の永久歯の歯並びや噛み合わせが少しずつ見えてきます。 反対咬合がある子どもでは、前歯だけを見るのではなく、上下の顎の成長や奥歯の噛み合わせ、永久歯が並ぶスペースまで含めて確認することが大切です。幼児期や6〜9歳ごろに矯正治療を行っていた場合でも、この時期にあらためて治療計画を検討することがあります。
10〜12歳は顎の成長をより丁寧に確認する時期
10〜12歳ごろになると、体の成長とともに顎の成長も進みます。反対咬合では、上顎と下顎の前後的な位置関係が噛み合わせに影響していることがあるため、成長の変化を継続して確認する必要があります。 特に下顎の成長は思春期以降も続くことがあります。そのため、この時期の歯並びだけを見て将来の噛み合わせを断定することはできません。 治療を考える際には、
などを総合的に確認します。
- 上下の顎の位置関係
- 前歯の噛み合わせ
- 犬歯や小臼歯の生え替わり
- 永久歯が並ぶためのスペース
- 奥歯の噛み合わせ
- 今後の顎の成長
永久歯がそろう前後で矯正方法が変わることがある
10〜12歳ごろは、まだ乳歯が残っている子どももいれば、永久歯への生え替わりがかなり進んでいる子どももいます。そのため、同じ年齢でも選択される矯正方法が同じとは限りません。 永久歯への生え替わり途中では、必要な部分に装置を使用しながら噛み合わせを整える方法が検討されることがあります。永久歯がほぼ生えそろっている場合には、ワイヤー矯正やマウスピース型の矯正装置などを含めて、歯全体の位置を整える治療を考える場合もあります。 ただし、装置の種類は年齢だけで選ぶものではありません。反対咬合の原因や歯の状態、顎の成長、本人が装置を適切に使用できるかどうかなどを確認したうえで判断します。
早い時期に矯正していても再評価が必要
幼児期や小学校低学年で反対咬合の治療を受けた場合、「一度治療したから、その後は確認しなくても大丈夫」と考えてしまうことがあります。 しかし、子どもの噛み合わせは永久歯への生え替わりや顎の成長によって変化します。前歯の反対咬合が一度整っていても、その後の成長によって上下の顎の位置関係が変わることがあります。 そのため、治療がいったん終了したあとも、必要に応じて定期的に噛み合わせを確認することが重要です。成長の経過を追うことで、追加の治療が必要かどうかを判断しやすくなります。
10〜12歳は永久歯列を見据えて治療を考える
この時期は、子どもの歯並びが乳歯中心の状態から永久歯中心の状態へ切り替わる大切なタイミングです。 「前歯の受け口が残っている」「下顎が以前より前に出て見える」「永久歯が生えて歯並びが変わってきた」と感じた場合には、現在の噛み合わせを確認しておくとよいでしょう。 10〜12歳ごろの反対咬合矯正では、目の前の歯並びだけを整えるのではなく、永久歯が生えそろったあとの噛み合わせまで見据えて治療方針を考えることが大切です。
13歳以降の受け口矯正|永久歯列期のワイヤー矯正・マウスピース矯正
13歳以降になると、永久歯がほぼ生えそろい、歯並びや噛み合わせが成人に近い状態へ移っていきます。反対咬合が残っている場合は、前歯だけでなく、上下の歯列全体や顎の位置関係を確認しながら治療方法を考えます。 この時期は、ワイヤー矯正やマウスピース型の矯正装置など、永久歯全体を対象とした治療が検討されることがあります。ただし、受け口の原因によって治療内容は大きく異なるため、「永久歯がそろったら同じ方法で治せる」というわけではありません。
13歳以降は歯並びだけでなく顎の成長も確認する
永久歯が生えそろったあとでも、顎の成長が完全に終了しているとは限りません。特に下顎は思春期以降も成長することがあるため、反対咬合では成長の程度を慎重に確認します。 前歯の傾きが主な原因であれば、歯の位置を整えることで噛み合わせの改善を目指すことがあります。一方、上下の顎の骨格的な位置関係が大きく関係している場合は、歯を動かすだけでは対応が難しいこともあります。 そのため、治療前には、
などを確認し、治療方針を検討します。
- 上下の前歯の傾き
- 奥歯の噛み合わせ
- 上顎と下顎の位置関係
- 顎の成長の程度
- 歯を並べるためのスペース
- 顔立ちと噛み合わせのバランス
ワイヤー矯正では歯を細かく動かしていく
ワイヤー矯正は、歯に装置を取り付け、ワイヤーの力を利用して歯を少しずつ動かす方法です。 反対咬合の治療では、前歯だけではなく、奥歯を含めた噛み合わせ全体を整える必要がある場合があります。歯の移動方向や量を細かく調整できることから、さまざまな歯並びで検討されます。 一方で、歯磨きがしにくくなることがあるため、矯正中はむし歯や歯肉炎を防ぐための丁寧なセルフケアが重要です。
マウスピース型矯正装置は自己管理も重要
透明なマウスピース型の矯正装置を用いて、歯を段階的に動かす方法が選択されることもあります。 取り外しができるため、食事や歯磨きの際に外せる点がありますが、決められた装着時間を守る必要があります。装着時間が不足すると、予定どおりに歯が動かないこともあるため、本人の自己管理が大切です。 また、すべての反対咬合にマウスピース型矯正装置が適しているわけではありません。骨格的な要因や歯の移動量などによっては、ほかの方法が検討されます。
骨格的な反対咬合では成長終了後の治療を検討することもある
上下の顎の大きさや位置関係による反対咬合では、顎の成長が治療計画に大きく関係します。 骨格的なずれが大きい場合には、成長の経過を確認したうえで、成人期に外科的な治療を含む方法が検討されることもあります。ただし、必要性は一人ひとり異なり、反対咬合だから外科的な治療が必要になるわけではありません。 13歳以降の受け口矯正では、永久歯がそろったという理由だけで治療方法を決めず、残っている顎の成長と反対咬合の原因を確認することが重要です。歯並びだけではなく、将来の噛み合わせまで見据えて治療計画を立てることが大切です。
反対咬合の矯正方法を選ぶ前に知っておきたい装置・期間・費用・受診の目安
子どもの反対咬合について調べていると、「どの矯正装置を使うのか」「治療期間はどのくらいかかるのか」「費用はいくら必要なのか」と気になることが増えてきます。 ただし、反対咬合の矯正方法は、年齢だけで決まるものではありません。前歯の傾き、上下の顎の位置関係、永久歯への生え替わり、顎の成長などによって治療計画が変わります。 治療を始める前に、装置の特徴だけではなく、治療の目的や今後の成長まで含めて説明を受けることが大切です。
反対咬合の矯正装置は原因や成長段階によって異なる
反対咬合の治療では、取り外し式の装置、固定式の装置、ワイヤー矯正、マウスピース型の矯正装置などが検討されることがあります。顎の成長を考慮した装置が選ばれる場合もあります。 「目立ちにくい装置がよい」「取り外せる装置がよい」と希望することはできますが、希望する装置が現在の反対咬合に適しているとは限りません。 装置を選ぶ際には、
といった点を確認します。 装置の名前だけで治療方法を決めず、「何を改善するために使う装置なのか」を理解することが重要です。
- 反対咬合の原因
- 歯の生え替わりの状態
- 上下の顎の成長
- 必要となる歯の移動
- 本人が装置を使用できるか
- 毎日の歯磨きや自己管理ができるか
反対咬合の矯正期間は一人ひとり違う
反対咬合の矯正期間は、治療開始時の状態や目的によって異なります。 前歯の噛み合わせを整える段階と、永久歯が生えそろったあとに歯列全体を整える段階が分かれることもあります。また、治療を行ったあとに顎の成長や永久歯の生え替わりを確認する期間が必要になる場合もあります。 子どもの矯正では、装置を使用している期間だけが治療ではありません。成長を定期的に確認する期間も、将来の噛み合わせを考えるうえで大切です。 治療期間について説明を受けるときは、「装置を使う期間」と「経過を確認する期間」を分けて聞いておくと、全体の流れを理解しやすくなります。
矯正費用は治療内容や装置によって変わる
反対咬合の矯正費用も、すべての子どもで同じではありません。 検査内容、使用する矯正装置、治療する範囲、治療期間、通院回数などによって費用は変わります。また、成長段階に合わせて複数の治療段階を検討する場合もあります。 治療を開始する前には、
などを確認しておくと安心です。 金額だけを比較するのではなく、どこまでの治療が費用に含まれているのかを確認することが大切です。
- 初回相談や検査に必要な費用
- 矯正装置の費用
- 通院時に必要となる費用
- 治療後の管理に関する費用
- 治療計画が変わった場合の費用
こんな受け口が気になったら一度相談を
反対咬合は、家庭で原因や今後の成長を判断することが難しい噛み合わせです。 たとえば、
といった場合には、歯科医院で噛み合わせを確認してもらうとよいでしょう。 相談したからといって、必ずすぐに矯正を始めるわけではありません。現在の状態を確認し、治療を検討する時期なのか、成長を見ながら経過観察する時期なのかを知ることにも意味があります。 反対咬合の矯正で大切なのは、装置の種類や治療開始の年齢だけに注目しないことです。子どもの成長、歯の生え替わり、噛み合わせを継続して確認しながら、その時期に必要な対応を考えていきましょう。
- 下の前歯が上の前歯より前に出ている
- 前歯が生え替わっても反対咬合が続いている
- 噛むときに下顎を前へ動かしている
- 成長とともに受け口が目立ってきた
- 歯並びだけでなく顎の位置も気になる
終わりに
子どもの受け口(反対咬合)は、歯の傾きだけで起こる場合もあれば、上顎と下顎の成長バランスが関係している場合もあります。そのため、見た目だけでは原因を判断しにくく、治療を始める時期や矯正方法も一人ひとり異なります。 3〜5歳ごろの乳歯列期では、まず噛み合わせや顎の動きを確認し、必要に応じて治療や経過観察を行います。6〜9歳ごろの前期混合歯列期では、永久歯の前歯が生え始めるため、反対咬合の状態をより詳しく確認できるようになります。10〜12歳ごろになると、永久歯への生え替わりが進み、顎の成長や将来の歯並びまで考えながら治療方針を検討することが大切です。 13歳以降は永久歯がほぼ生えそろい、ワイヤー矯正やマウスピース型の矯正装置など、歯列全体を対象とした治療が検討されることもあります。ただし、骨格的な要因が大きい反対咬合では、顎の成長を継続して確認しながら治療計画を考える必要があります。
反対咬合は「何歳から」だけで判断しない
子どもの矯正について調べると、「何歳から始めればいいのか」という情報に目が向きやすくなります。しかし、反対咬合では年齢だけを基準に治療を決めることはできません。 大切なのは、
などを確認し、その子に合った時期に必要な対応を考えることです。 早く治療を始めれば必ずよいというわけではありません。一方で、反対咬合に気づいているにもかかわらず、相談せずに長期間そのままにすることが適切とは限りません。
- 乳歯と永久歯の生え替わり
- 前歯の傾きや位置
- 上顎と下顎の成長
- 噛んだときの顎の動き
- 永久歯が並ぶスペース
- 今後の成長の見通し
早めの相談が将来の治療を考える第一歩
「まだ乳歯だから相談するには早いかな」「永久歯が全部生えてから考えればいいかな」と迷う保護者の方もいるでしょう。 反対咬合が気になった時点で一度歯科医院に相談すると、現在の噛み合わせや顎の成長を確認できます。すぐに矯正治療を始める必要がなければ、定期的に経過を確認しながら適切なタイミングを考えることもできます。 小児歯科医は、今見えている歯並びだけでなく、これから起こる永久歯への生え替わりや顎の成長も含めて子どもの口を見ていきます。 受け口の矯正で大切なのは、「何歳だからこの治療」と決めることではありません。子どもの成長に合わせて噛み合わせを継続して確認し、その時期に必要な治療や経過観察を選ぶことです。 お子さんの下の前歯が上の前歯より前に出ている、成長とともに受け口が目立ってきたなど、少しでも気になることがあれば、まずは現在の噛み合わせを確認してもらうところから始めてみてください。

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