上の前歯が下の前歯を深く覆う噛み合わせを「過蓋咬合(かがいこうごう)」といいます。過蓋咬合が強い場合、下の前歯が上の前歯の裏側にある歯茎や口蓋に触れたり、反対に上の前歯が下の前歯側の歯茎に負担をかけたりすることがあります。繰り返し同じ場所を噛むと、赤みや傷、痛みにつながることもあるため注意が必要です。 ただし、過蓋咬合の原因や程度は一人ひとり異なります。前歯の生え方だけではなく、奥歯の高さ、歯並び、顎の成長や骨格など複数の要素が関係するため、見た目だけで治療の必要性を判断することはできません。 小児歯科医として大切にしているのは、「歯並びがきれいかどうか」だけを見るのではなく、成長途中の噛み合わせが歯や歯茎、食事などにどのような負担を与えているかを確認することです。特に、歯茎や口の中を繰り返し噛んでいる場合は、成長を見守るだけでよいのか、早めに対応したほうがよいのかを確認する意味があります。 この記事では、過蓋咬合で歯茎を噛んでしまう原因をはじめ、痛みや傷ができる理由、家庭で気をつけたいこと、歯科医院へ相談したいサイン、子どもの過蓋咬合を治療する時期の考え方まで詳しくお伝えします。 過蓋咬合について正しく知ることで、「今すぐ治療が必要なのでは」と必要以上に不安になるのではなく、お子さんの口の中を確認しながら適切なタイミングで相談できるようになります。 歯茎を繰り返し噛んで痛みや傷が出ている場合は、噛み合わせからの負担を確認することが大切です。家庭で痛みを我慢させ続けるのではなく、お子さんの成長や歯の生え替わりも含めて歯科医院で噛み合わせを確認してもらいましょう。
- 「前歯を噛み合わせると、歯茎まで噛んでいるように見える」
- 「歯茎に赤い跡や傷があり、食事のときに痛がる」
- 「噛み合わせが深いと言われたけれど、このままで大丈夫なのか心配」
- 「子どものうちに治療したほうがよいのか判断できない」
- 「家庭で痛みをやわらげるためにできることを知りたい」
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過蓋咬合で歯茎を噛むのはなぜ?深い噛み合わせの特徴
過蓋咬合(かがいこうごう)とは、奥歯を噛み合わせたときに、上の前歯が下の前歯を深く覆っている状態です。「噛み合わせが深い」と表現されることもあります。 通常でも上の前歯は下の前歯に少しかぶさりますが、かぶさり方が強くなると、下の前歯がほとんど見えないことがあります。さらに過蓋咬合の程度によっては、下の前歯の先端が上の前歯の裏側にある歯茎や口蓋に触れ、噛むたびに同じ場所へ力が加わることがあります。 反対に、上の前歯が下の前歯側の歯茎へ近づきすぎて、歯茎に負担がかかる場合もあります。
過蓋咬合では歯茎に歯の跡がつくことがある
お子さんの口の中を見たときに、
といった変化が見られる場合、深い噛み合わせによって歯が歯茎へ接触している可能性があります。 一度だけ軽く触れた程度であれば、必ずしも大きな問題になるとは限りません。しかし、毎日の食事や歯ぎしりなどによって何度も同じ部分を噛んでいると、刺激が繰り返されます。歯茎の赤みや痛みが続いている場合は、「そのうち治るだろう」と長く様子を見るより、噛み合わせの状態を確認することが大切です。
- 歯茎に前歯の形の跡がついている
- 同じ場所が赤くなっている
- 歯茎や口蓋に小さな傷がある
- 食事のときに特定の場所を痛がる
見た目だけでは過蓋咬合の程度を判断できない
過蓋咬合というと、「上の前歯が下の前歯を隠しているかどうか」だけに注目しがちです。しかし、確認したいポイントは見た目だけではありません。 歯科医院では、前歯の重なり方に加えて、
などを総合的に見ていきます。 子どもの口の中は、歯の生え替わりや顎の成長によって変化します。そのため、過蓋咬合があるからといって、すべてのお子さんに同じ対応が必要になるわけではありません。 一方で、歯茎を実際に噛んでいる、傷が繰り返しできている、痛みを訴えている場合は、噛み合わせによる負担がすでに表れているサインのひとつです。 過蓋咬合では、「歯並びが深く見える」という見た目だけでなく、歯が歯茎や口蓋へどのように当たっているかを確認することが重要です。お子さんが痛がっていなくても、歯茎に同じような跡が繰り返し残る場合は、歯科医院で一度噛み合わせを確認してもらうと安心です。
- 前歯が歯茎や口蓋に触れていないか
- 奥歯がどのように噛み合っているか
- 永久歯への生え替わりがどの段階か
- 上下の顎がどのように成長しているか
- 食事や日常生活で痛みが出ていないか
過蓋咬合で歯茎を噛む原因|歯並びや顎の成長との関係
過蓋咬合で歯茎を噛んでしまう原因は、前歯の生え方だけではありません。上下の顎の成長、奥歯の高さ、歯並びなど、いくつかの要素が重なって噛み合わせが深くなることがあります。 子どもの口の中は成長途中にあり、乳歯から永久歯へ生え替わる時期には噛み合わせも大きく変化します。そのため、現在の歯並びだけを見るのではなく、顎や永久歯の成長も含めて考えることが大切です。
上の前歯が下の前歯を深く覆っている
過蓋咬合では、上の前歯が下方向へ深くかぶさることで、下の前歯の先端が上の前歯の裏側にある歯茎や口蓋へ近づきます。 噛み合わせがさらに深くなると、奥歯をしっかり噛んだときに下の前歯が歯茎へ直接触れることがあります。毎日の食事や無意識の食いしばりなどで同じ部分に接触が繰り返されれば、赤みや痛み、傷につながる場合があります。
奥歯の高さが噛み合わせの深さに関係する
前歯だけでなく、奥歯がどのように生えているかも過蓋咬合に関係します。 奥歯の高さが十分でない場合、上下の顎を閉じたときに前歯が深く重なりやすくなります。永久歯への生え替わりの途中では、奥歯の生え方や高さも少しずつ変わるため、年齢によって噛み合わせの見え方が変化することも珍しくありません。 「前歯だけが問題」と考えず、奥歯を含めた口全体の噛み合わせを確認する必要があります。
顎の成長や骨格も過蓋咬合の原因になる
過蓋咬合には、上下の顎の大きさや位置関係が関係している場合もあります。 子どもの顔や顎は成長とともに変化しますが、上下の顎が同じように成長するとは限りません。顎の成長方向や骨格の特徴によっては、前歯が深く噛み込みやすい状態になることがあります。 歯だけを動かせばよいケースなのか、顎の成長を含めて経過を見たほうがよいのかは、お子さんによって異なります。
歯の傾きや歯並びも確認したいポイント
前歯が内側へ傾いていると、上下の前歯が深く重なりやすくなります。また、歯が並ぶスペースや永久歯の生え方によっても噛み合わせは変化します。 過蓋咬合の原因として考えられる要素は、
などがあります。 過蓋咬合で歯茎を噛んでいる場合は、見えている傷だけに対応するのではなく、「なぜ歯茎に歯が当たっているのか」を確認することが重要です。 子どもの噛み合わせは成長によって変化するからこそ、現在の状態とこれからの成長の両方を見る必要があります。歯茎への接触が続いている場合は、歯並びだけでなく、奥歯や顎の成長を含めて歯科医院で確認してもらいましょう。
- 上下の前歯の生える位置や傾き
- 奥歯の高さや噛み合わせ
- 上下の顎の大きさや位置関係
- 顎の成長する方向
- 乳歯から永久歯への生え替わり
- 歯が並ぶためのスペース
過蓋咬合で歯茎を噛むと起こりやすい痛みや傷・口の中への負担
過蓋咬合が強く、前歯が歯茎や口蓋に繰り返し当たっていると、口の中にさまざまな負担がかかることがあります。 特に気づきやすいのが、歯茎の赤みや傷、食事のときの痛みです。子どもは違和感をうまく言葉にできないこともあるため、「食べるのが遅くなった」「硬いものを嫌がる」「口の中を気にしている」といった行動の変化にも目を向けることが大切です。
歯茎や口蓋に赤みや傷ができることがある
過蓋咬合では、噛むたびに前歯の先端が同じ場所へ当たり続けることがあります。 一度の接触だけで大きな問題になるとは限りませんが、毎日繰り返されると歯茎や口蓋が刺激を受け、赤くなったり、小さな傷ができたりすることがあります。 口の中に歯の形に沿った跡が残っている場合は、噛み合わせによる接触が関係している可能性があります。 また、傷ができている部分に食べ物が触れると、しみるような痛みを感じることもあります。
食事のときに痛みや違和感が出る場合がある
歯茎や口蓋に傷があると、噛む動作そのものが負担になることがあります。 特に硬い食べ物や、塩分・酸味の強い食べ物は傷に触れると刺激になりやすいため、お子さんが急に食べにくそうにする場合があります。 痛みを避けようとして片側ばかりで噛んだり、食事量が減ったりすることもあるため、単に「好き嫌いが増えた」と決めつけないことが大切です。 口の中に赤みや傷がないか、一度確認してみましょう。
同じ場所への刺激が繰り返されることが問題になる
過蓋咬合による歯茎への負担で注意したいのは、傷そのものだけではありません。 噛み合わせが変わらないまま同じ場所へ歯が当たり続けると、いったん落ち着いたように見えても、再び傷つくことがあります。 歯茎を繰り返し噛んでいる場合は、「傷が治るか」だけを見るのではなく、「歯が当たり続けていないか」を確認することが重要です。
痛みがなくても歯茎への接触が続いていることがある
子どもが「痛くない」と言っていても、歯茎への負担がないとは限りません。 子どもは同じ状態が続いていると違和感に慣れてしまうことがあります。また、軽い接触では自覚症状がほとんど出ない場合もあります。 保護者の方が確認したいポイントは、
といった変化です。 過蓋咬合による負担は、見た目の歯並びだけでは判断できません。歯茎や口蓋に傷や痛みがある場合は、前歯がどの部分に当たっているのかを確認する必要があります。 お子さんが痛みを訴えている場合や、同じ場所の傷を繰り返している場合は、我慢させ続けず、歯科医院で噛み合わせを確認してもらいましょう。
- 歯茎や口蓋に歯の跡が残っている
- 同じ場所が何度も赤くなる
- 小さな傷が繰り返しできる
- 食事のときだけ痛がる
- 硬い食べ物を避けるようになった
- 噛み合わせると下の前歯がほとんど見えない
子どもが歯茎を噛んで痛がるときに家庭でできる対処法
過蓋咬合によって歯茎や口蓋を噛んでしまい、お子さんが痛がっているときは、まず傷ついた部分へ余計な刺激を加えないことが大切です。 家庭でできる対処は、噛み合わせそのものを変えることではありません。痛みをやわらげ、傷が悪化しにくい環境を整えながら、必要に応じて歯科医院で原因を確認することが基本になります。
痛みがある間は刺激の少ない食事を選ぶ
歯茎や口蓋に傷があると、普段は問題なく食べられるものでも痛みを感じることがあります。 特に、硬いものや尖った食べ物は傷へ直接当たりやすいため、痛みが強い時期には避けたほうがよいでしょう。 食事では、
などを選ぶと、口の中への負担を抑えやすくなります。 一方で、せんべいや硬いパン、角のあるスナック菓子などは、傷ついた部分へ当たることがあります。 酸味や塩分の強い食べ物も、傷にしみる場合があります。食べたときに痛がるものは無理に続けず、口の中が落ち着くまで控えましょう。
- やわらかく調理したご飯や麺類
- 豆腐や卵料理
- やわらかく煮た野菜
- 刺激の少ないスープ
- 小さく切って食べやすくした料理
歯磨きは傷を避けながら丁寧に続ける
歯茎が痛いからといって、歯磨きをすべて休んでしまうことはおすすめできません。 口の中に汚れが残ると、歯茎の状態を保ちにくくなるため、傷ついた部分を強くこすらないようにしながら、できる範囲で清潔を保つことが大切です。 やわらかめの歯ブラシを使い、力を入れずに磨きましょう。痛みのある場所へ歯ブラシが直接当たる場合は、無理に強く磨く必要はありません。 仕上げ磨きをしている年齢であれば、保護者の方が口の中を確認する機会にもなります。赤みや傷の範囲、歯の跡などを毎日確認しておくと、変化にも気づきやすくなります。
傷の状態を定期的に確認する
歯茎や口蓋を噛んだ跡を見つけたら、その日の状態だけで判断せず、数日間の変化を確認してみましょう。 確認したいポイントは、
などです。 歯茎や口蓋の傷が一度落ち着いても、過蓋咬合によって同じ歯が当たり続けていると、再び傷つく場合があります。 「傷が消えたから大丈夫」と考えるだけではなく、歯の接触が続いていないかを見ることが重要です。
- 赤みが強くなっていないか
- 傷が広がっていないか
- 出血していないか
- 同じ場所を繰り返し噛んでいないか
- 食事のときの痛みが強くなっていないか
自分で歯を削ったり噛み合わせを変えたりしない
歯が歯茎へ当たっているのを見ると、「少し削れば当たらなくなるのでは」と感じることがあるかもしれません。 しかし、家庭で歯を削ったり、市販の材料を使って噛み合わせを無理に変えたりすることは避けてください。 子どもの歯や噛み合わせは成長途中です。自己判断で歯の形や当たり方を変えると、別の場所に負担がかかる可能性があります。 家庭では傷への刺激を減らすことを優先し、噛み合わせへの対応は歯科医院で判断してもらいましょう。 過蓋咬合で歯茎を噛んで痛がるときは、やわらかい食事や丁寧な歯磨きで口の中への負担を減らすことが大切です。ただし、家庭での対処はあくまで痛みや刺激を抑えるためのものです。 傷が繰り返しできる、痛みが続く、食事に影響が出ている場合は、歯がどのように歯茎へ当たっているのかを歯科医院で確認してもらいましょう。
過蓋咬合で歯茎を噛むときに歯科医院へ相談したいサイン
過蓋咬合があっても、すべてのお子さんにすぐ治療が必要になるわけではありません。ただし、前歯が歯茎や口蓋に当たり、痛みや傷などの症状が出ている場合は、噛み合わせによる負担を一度確認してもらうことが大切です。 特に、同じ場所を繰り返し噛んでいる場合は、傷が治っても再び刺激を受ける可能性があります。見た目の歯並びだけではなく、口の中にどのような影響が出ているかを受診の目安にしましょう。
歯茎や口蓋の傷を繰り返している
一度できた小さな傷が数日で落ち着くことはあります。しかし、傷が治っては再びできる状態を繰り返している場合、前歯が同じ場所へ接触し続けている可能性があります。 過蓋咬合による接触が原因であれば、傷だけを見ていても根本的な負担は変わりません。歯がどの位置に当たっているのか、噛み合わせ全体を確認する必要があります。
痛みで食事に影響が出ている
歯茎や口蓋を噛んだことによる痛みで、食事がしにくくなる場合もあります。 次のような変化が見られたら注意しましょう。
子どもは「歯茎が痛い」と具体的に説明できないことがあります。食べ方の変化も、口の中の不調を知らせるサインとして見てあげてください。
- 硬い食べ物を避けるようになった
- 食事に時間がかかるようになった
- 噛むと痛いと訴える
- 片側だけで噛むことが増えた
- 食事量が減っている
- 食べ物が傷に触れると強く痛がる
出血や腫れが続いている
歯が繰り返し当たることで、歯茎から出血したり腫れたりすることがあります。 出血が続いている、傷が深く見える、腫れが強くなっている場合は、自己判断で長く様子を見ずに歯科医院へ相談しましょう。 また、強い痛みが続く場合や口の中の状態が急に悪化した場合も、過蓋咬合以外の原因が隠れていないか確認することが大切です。
歯茎を噛んでいなくても噛み合わせが極端に深い
現在は痛みがなくても、奥歯を噛んだときに下の前歯がほとんど見えないほど上の前歯が深く覆っている場合は、一度噛み合わせを確認しておくとよいでしょう。 子どもの歯並びは、永久歯への生え替わりや顎の成長に伴って変化します。現在の状態だけではなく、これからどのように噛み合わせが変化していくのかを継続して確認することが重要です。
「痛くないから大丈夫」とは限らない
歯茎に歯の跡が残っていても、お子さん自身は痛みを訴えないことがあります。 痛みがない場合でも、前歯が歯茎や口蓋へ繰り返し当たっている状態が確認できるなら、歯科医院へ相談するきっかけになります。 受診したからといって、必ずすぐに矯正治療を始めるわけではありません。歯の生え替わりや顎の成長を見ながら経過を確認する場合もあります。 大切なのは、「過蓋咬合があるか」だけで判断するのではなく、「歯茎を噛んでいるか」「痛みや傷があるか」「食事に影響しているか」といった口の中への負担を見ることです。 歯茎の傷や痛みを繰り返している場合は、我慢させるのではなく、歯科医院で噛み合わせを確認してもらいましょう。
子どもの過蓋咬合はいつ治療する?成長期に確認したいポイント
子どもの過蓋咬合を見つけると、「早いうちに治療したほうがよいのでは」と心配になる保護者の方も多いでしょう。 しかし、過蓋咬合があるからといって、すべてのお子さんが同じ年齢で治療を始めるわけではありません。治療を考える時期は、歯の生え替わり、顎の成長、噛み合わせの深さ、歯茎や口蓋への負担などを確認しながら判断します。 特に、前歯が歯茎を噛んで傷や痛みが出ている場合は、年齢だけで判断せず、現在の口の中への負担を確認することが大切です。
乳歯から永久歯への生え替わりを確認する
子どもの噛み合わせは、乳歯から永久歯へ生え替わる過程で変化します。 前歯だけが永久歯になっている時期と、奥歯まで永久歯が生えてきた時期では、噛み合わせの状態も異なります。そのため、一時的に深く見えているのか、成長しても深い噛み合わせが続く可能性があるのかを見ながら判断する必要があります。 「何歳になったら必ず治療する」と一律に決めるのではなく、お子さんの歯の生え替わりに合わせて確認していきます。
歯茎や口蓋への負担がある場合は早めに相談する
過蓋咬合があっても、痛みや傷などがなく、歯の生え替わりを見ながら経過を確認できる場合があります。 一方で、
といった状態が見られる場合は、早めに歯科医院へ相談しましょう。 治療を始めるかどうかとは別に、現在どの程度の負担がかかっているのかを確認しておく意味があります。
- 前歯が歯茎や口蓋に当たっている
- 同じ場所に傷を繰り返している
- 噛むと痛みがある
- 食事に支障が出ている
- 歯茎に歯の跡が残っている
顎の成長も治療時期を考えるポイント
子どもの過蓋咬合には、歯の位置だけでなく、上下の顎の大きさや成長方向が関係していることがあります。 成長期は顎の状態も変化するため、現在の歯並びだけを見て治療時期を決めることはできません。 歯科医院では、前歯の重なり方や奥歯の噛み合わせに加え、顎の成長や永久歯が生えるスペースなども確認します。必要に応じて定期的に経過を見ることで、治療を考える適切なタイミングを判断しやすくなります。
早く始めればよいとは限らない
矯正治療は、早く始めれば必ずよいというものではありません。 成長を待ったほうがよい場合もあれば、歯茎への負担などを考えて成長途中から対応を検討する場合もあります。大切なのは、「周りの子が始めたから」「永久歯になる前だから」といった理由だけで決めないことです。 お子さん自身の噛み合わせと成長に合った時期を考える必要があります。 過蓋咬合の治療時期に迷ったときは、治療をすぐ始めるかどうかだけを相談するのではなく、「現在どのような状態なのか」「今後どこを見ていけばよいのか」を確認しておくと安心です。 特に歯茎を噛んで痛みや傷が出ている場合は、成長を待つだけでよいか自己判断せず、歯科医院で噛み合わせを確認してもらいましょう。
過蓋咬合による歯茎への負担を減らすために大切なこと
過蓋咬合によって前歯が歯茎や口蓋に当たっている場合、大切なのは「傷ができたときだけ対処すること」ではありません。歯がどのように当たっているのかを確認し、口の中への負担が続いていないかを見守ることが重要です。 子どもの噛み合わせは、歯の生え替わりや顎の成長によって少しずつ変化します。今は軽い接触でも、成長に伴って当たり方が変わることがあります。反対に、生え替わりが進むことで状態が変化する場合もあります。 そのため、過蓋咬合は一度見ただけで判断するのではなく、成長の流れの中で確認していくことが大切です。
歯茎の傷だけでなく噛み合わせ全体を見る
歯茎に傷ができると、どうしても傷そのものに目が向きやすくなります。 しかし、過蓋咬合で大切なのは「なぜ傷ができているのか」を考えることです。 前歯の重なりが深い、奥歯の高さに特徴がある、前歯の傾きが強いなど、歯茎へ歯が当たる背景には複数の要素が関係していることがあります。 歯茎の傷だけではなく、
といった点も一緒に見ることが大切です。
- 前歯がどの程度重なっているか
- 歯が歯茎や口蓋に直接触れていないか
- 奥歯がどのように噛み合っているか
- 永久歯への生え替わりが進んでいるか
- 顎がどのように成長しているか
定期的に口の中を確認する
家庭では、お子さんの歯磨きや仕上げ磨きのときに、口の中を定期的に確認してみましょう。 歯茎や口蓋に赤みがないか、歯の跡が残っていないか、傷が繰り返しできていないかを見ることで、変化に早く気づきやすくなります。 特に、過去に歯茎を噛んだことがある場合は、同じ場所に再び傷ができていないかを確認しておくと安心です。 また、お子さんが「痛くない」と言っていても、接触そのものが続いている場合があります。症状の有無だけではなく、口の中の状態も合わせて見ていきましょう。
食べ方の変化にも気づく
過蓋咬合による負担は、口の中を見ただけではわからないこともあります。 食事のときに片側ばかりで噛む、硬い食べ物を避ける、食べる速度が急に遅くなるなどの変化が見られたら、痛みや違和感がないか確認してみましょう。 子どもは口の中の不調をうまく言葉にできないことがあります。日常のちょっとした変化が、噛み合わせによる負担に気づくきっかけになることもあります。
成長に合わせて歯科医院で経過を確認する
過蓋咬合がある場合、すぐに治療が必要とは限りません。 ただし、歯茎や口蓋を噛んでいる、傷を繰り返している、食事に影響が出ている場合は、経過観察だけでよいかどうかを歯科医院で確認することが大切です。 子どもの噛み合わせは成長によって変わるため、一度診てもらって終わりではなく、必要に応じて定期的に確認していきます。 小児歯科医の立場では、歯並びの見た目だけでなく、歯や歯茎に負担がかかっていないか、成長の中で噛み合わせがどのように変化しているかを見ることを大切にします。 過蓋咬合による歯茎への負担を減らすためには、家庭で口の中を確認し、無理に自己判断で対応せず、必要なタイミングで歯科医院へ相談することが重要です。 「痛くなってから受診する」のではなく、歯茎への接触が続いている段階で確認しておくことが、お子さんの口の健康を守ることにつながります。
終わりに
過蓋咬合は、上の前歯が下の前歯を深く覆う噛み合わせです。程度によっては、前歯が歯茎や口蓋に触れ、赤みや傷、痛みにつながることがあります。 お子さんの歯茎に歯の跡がついていたり、同じ場所を繰り返し噛んでいたりすると、「すぐに矯正治療を始めなければならないのでは」と不安になるかもしれません。 しかし、過蓋咬合があるからといって、すべてのお子さんに同じ治療が必要になるわけではありません。子どもの口の中は、乳歯から永久歯への生え替わりや顎の成長によって変化します。現在の噛み合わせだけではなく、歯の生え方や奥歯の高さ、顎の成長、歯茎への負担などを総合的に確認することが大切です。 特に注意したいのは、
といった変化です。 痛みがあるときは、やわらかく刺激の少ない食事を選び、傷ついた場所を強くこすらないようにしながら口の中を清潔に保ちましょう。ただし、家庭でできる対処は、痛みや刺激を抑えるためのものです。噛み合わせそのものを家庭で変えることはできません。 傷が治っても同じ場所に前歯が当たり続けていれば、再び負担がかかる可能性があります。「傷が治ったから大丈夫」と考えるだけではなく、なぜ歯茎を噛んでいるのかを確認することが重要です。 また、子どもは口の中の違和感をうまく言葉にできないことがあります。「痛くない」と言っていても、歯茎に歯の跡が残っていることもあります。仕上げ磨きや歯磨きの際に、ときどき歯茎や口蓋まで見てあげてください。 過蓋咬合では、見た目の歯並びだけで判断するのではなく、歯や歯茎にどの程度の負担がかかっているかを見ることが大切です。 歯茎を繰り返し噛んでいる、痛みや傷が続いている、食事に影響が出ている場合は、我慢させずに歯科医院へ相談しましょう。成長途中だからこそ、現在の状態を確認し、お子さんに合ったタイミングで噛み合わせを見守っていくことが、これからの口の健康を守ることにつながります。
- 歯茎や口蓋に歯の跡が残っている
- 同じ場所に赤みや傷を繰り返している
- 噛むと痛がる
- 硬いものを食べにくそうにしている
- 片側ばかりで噛むようになった
- 下の前歯がほとんど見えないほど噛み合わせが深い
